13.発症前遺伝子診断で何が分かるのか?

 正確な遺伝子診断により疾患に関連する遺伝子変異を保有しているかどうかが分かります。仮に、遺伝子変異を保有している場合、様々な後天的要因(環境要因)がその浸透率や実際の発症率に影響します。家族性大腸腺腫症を持つほとんどの人は効果的な予防策を採らない限り、大腸がんになります。その一方で、BRCA1乳がん関連遺伝子の保因者である女性が65歳までに乳がんを発病する可能性は80%です。つまり、発症の可能性は高いが、必ず発症するとは限らない遺伝子変異もあります。

 もちろん、家系の中でその変異した遺伝子を受け継がなかった人でも、発症の危険を免れたというわけではありません。誰もが一般の人と同じ確率で一生のうちに変異が起こる可能性を持っています。あるいは、まだ知られていない疾患に関連する遺伝子変異を受け継いでいる可能性もあります。



図17:疾患遺伝子を探している研究者は、「疾患多発家系」−通常数世代に渡って血縁者内に複数の発症者を持つ家系の人たち−のDNAの研究からまず始めます。