17.将来期待される遺伝子診断の恩恵は?

 がんを引き起こす遺伝子を突き止めることは、遺伝性のものかそうでないかに関わらずすべてのがんにとって深い意味合いを持っています。それは生涯のうちに環境要因により同じ遺伝子の正常アレルの変異が引き起こされ、非遺伝性のがんが引き起こされる可能性があるからです。それゆえ、がん遺伝子を同定することにより、がんをもつすべての人々に関係のあるがん発生のメカニズムを研究することができます。

 遺伝子とマーカー遺伝子はがんの診断や治療をより良いものにするための道具としても使える可能性があります。細胞中の変異遺伝子(あるいはそのタンパク生産物)を便や尿、唾液中、あるいは生検材料中の細胞から検出することにより、従来の診断技術よりも数年も早くがんを発見することができるようになるかもしれません(変異遺伝子のプローブを注射して、標識された放射線を検出することによって変異遺伝子がある場所−がんが存在すると考えられる場所−を調べる方法は、以前から考えられています)

 発がん予防薬を評価する場合でも、発がんリスクの高い被験者を対象に検討することで効率よく行うことができます。さらに、もしある遺伝子が抗腫瘍タンパクを作り出すことが分かれば、それを合成し薬として使用することが可能となるでしょう。そして最終的には、変異した遺伝子を不活性化したり正常なものに置き換えたりといった遺伝子治療(78)でがんを治すことが可能になるかもしれません。