21.遺伝子診断の対象者は?

 がんの発症前遺伝子診断は、がんの発症に関わる遺伝性の遺伝子変異を持つ人を特定することを目的としています。
 まず、連鎖解析研究に参加している家族が最初の候補者となり、疾患関連遺伝子やマーカー遺伝子を見つけ出す研究が行われます。一度遺伝子が単離され、遺伝子診断の方法が確立されると、より広範囲の人々を対象とした診断が可能になります。そのとき、候補となるのが、少なくとも二世代に渡って数人のがん患者がいるというがんになる危険度の高い家族です。次は、血縁者の中に一人あるいは二人のがんの人がいるといった家族歴の人が対象になります。
 遺伝性の大腸がんや乳がんの遺伝子診断が一般にも行われるのも遠い未来のことではありません(訳者注:米国ではすでに一般的に行われており、保険の対象となる場合もありますが、日本ではまだそこまで進んでいません)。この診断の目的はどれも、疾患関連遺伝子を持つ人を特定することです。その対象者には、変異遺伝子を受け継いだ人で、家族歴が明らかでない人(例えば、父方から乳がんになりやすい遺伝子を受けついだ女性など)も含まれます。また、受精卵の発育のごく初期の段階で新たに遺伝子変異が起こった人も含まれます。
忘れてならないのは、発症前遺伝子診断は、将来、乳がんや大腸がんになる人の内のごく少数を発見できるに過ぎないということです。というのは、ほとんどのがんは遺伝性ではないということです。