23.遺伝子診断を受けるべきかどうかをどのように決定するのか?

 1994年、タイム誌とCNNが“発症する可能性のある疾患がわかる遺伝子診断を受けたいかどうか?”という世論調査を行いました。知りたいと答えた50%の人とほぼ同数(49%)の人が、知らないままでいたい答えました。

 診断を受けることを決めるのはきわめて個人的な問題ですし、自由な意志によるものでなくてはなりません。本当にその情報が知りたい場合にのみ診断を受けることに合意すべきでしょう。ですから、遺伝子診断を考えている人は血縁者や医療従事者、およびその他の誰にも診断を受けることを強要されるべきではありません。
図23:有効な治療や予防策を受けることができるかどうかに関係なく、今後人生で起こり得る疾患を予測する遺伝子診断を受けたいかどうかについて質問したとろ、「はい」と答えた人とほぼ同数の人が「いいえ」と答えました。

 さらに、専門家は診断結果が医療上の何らかの恩恵をもたらすとき以外は、両親に未成年の子供の遺伝子診断を受けないよう助言します。大人になって発症する疾患の大半は、未成年期に遺伝子診断の結果を知ったとしても、疾患の発症や進行並びに治療に影響を及ぼさないからです。

 遺伝子診断を受けるかどうかの決断は本人にゆだねられるべきであり、それも、その重要性を理解し結果を受け止められるくらいに成長してから行うべきです。

 遺伝子診断によって引き起こされる問題は複雑かつ経験のないものであることから、遺伝子診断を受けるかどうかの決定に際しては、準備と検討に細心の注意を払うことが必要です。まず重要なのは遺伝子診断を行うことによって何らかの対応が早期にとれるかどうかという点です。つまり仮に診断の結果が陽性であった場合、発がん予防や早期発見のための何らかの対応が可能なのかどうかです。

 特に、予防法も治療法も無い疾患であった場合、遺伝子診断を受けるかどうかの選択は変ってきます。その代表的な例がハンチントン舞踏病で、多くの家族が最初は遺伝子診断に前向きですが、遺伝子診断をいざ受けようという段階になって躊躇してしまう人がほとんどです。

 一方、予防法、早期発見法や治療方法のある乳がんや大腸がんでは話が違ってきます。実際、乳がん遺伝子研究が始められたころの報告d、DNA検査の血液を提供したほとんどの人はその診断結果を知りたがるという結果が示されました。