放射線治療科

放射線治療について

「放射線治療」は、「外科療法」、「薬物療法」と並ぶがん治療の3本柱の一つで、多くのがんに有効です。

放射線治療には、放射線でがんの根治を目指す根治的放射線治療、がんによる痛みなどの苦痛を緩和する緩和的放射線治療、手術後の再発予防を目的とした術後放射線治療などがあります。

最近の治療装置と治療技術の進歩はめざましく、高精度な放射線治療が可能となりました。放射線をがん病巣に集中させることにより、放射線の副作用を抑えながら、十分な治療効果を引き出すことが可能となっています。

四国がんセンターの放射線治療について

四国がんセンター放射線治療科は、愛媛県内でも有数の放射線治療実績を有しており、年間のべ750名程度(うち新患は550名程度)の患者さんの放射線治療を行っています。

当院では、特に高精度放射線治療に注力しており、IMRT (強度変調放射線治療)、定位放射線治療、画像誘導小線源治療を積極的に行っています。これらの高精度放射線治療を取り入れることにより、放射線治療成績は以前と比べて飛躍的に向上しました。

また、2026年2月からは泌尿器科と協力しながら「転移を来した去勢抵抗性前立腺がん(ホルモン療法が効きにくい前立腺がん)」に対する放射性リガンド療法(放射性薬剤による全身治療)も開始しました。

当院では、前立腺がん患者さんに対して適切な治療が行えるように、IMRT・VMATによる外部照射、定位放射線治療、小線源治療、放射性リガンド療法など放射線治療の選択肢をたくさん用意しています。

さらに、新しい治療を開発し、医学の進歩に貢献したりするために、臨床試験や治験などにも積極的に参加しております。

高精度放射線治療
適応となりえるがん
IMRT(強度変調放射線治療)
頭頸部がん
肺がん
食道がん
前立腺がん
子宮がん
など
定位放射線治療
早期肺がん
小さい肝臓がん
脳転移
肺や肝臓などの少数の転移
脊椎転移
など
画像誘導小線源治療
子宮頸がん

図1. 新治療装置(2018年4月より導入)

特徴的な治療の説明

定位放射線治療(肺、肝臓、骨などの腫瘍、脳転移)

定位放射線治療は、メディアでピンポイント照射などと紹介されている場合もあります。様々な角度・方向から、狭い範囲に放射線を集中させることで、腫瘍には十分な放射線を当てながら、腫瘍以外の組織に照射される放射線を低減することを目的とした治療法です。当院では、肺、肝臓、脊椎などの腫瘍に対して、定位放射線治療を行っており、経験・実績を積み上げています。

また、新治療装置を導入したことにより、4~5個以上の脳転移がある場合でも定位放射線治療が可能となりました。腫瘍の大きさや場所にもよりますが、10個未満の脳転移であれば1日1ヵ所ずつ、30分程度の治療を繰り返すことで治療出来ます。

図2. 左肺腫瘍への体幹部定位放射線治療の線量分布図

様々な角度方向から左肺の腫瘍に放射線を集中させて照射を行います。腫瘍の部分は強く放射線が照射され、腫瘍以外の組織の放射線量は低減されています。

図3. 肺癌多発脳転移(6箇所)の脳造影MRI画像

1mm未満の脳転移を疑う腫瘍が脳に6箇所あります。

図4. 多発脳転移への定位放射線治療の照射野

治療装置が患者さんの周りを回転しながら照射を行います。腫瘍に放射線が集中するように、角度を変えて何度か照射を繰り返します。

図5. 多発脳転移への定位放射線治療の線量分布図

腫瘍に集中して放射線が照射され、それ以外の組織の線量は低減されています。

強度変調放射線治療(IMRT・VMAT)

強度変調放射線治療は、放射線の強さや照射範囲をコンピュータ制御することによって、腫瘍以外の組織が受ける線量を制限しつつ、安全に腫瘍への線量の増加を行うことができます。主に前立腺癌や頭頸部がんの患者さんの治療に用いています。

2018年4月に導入した新治療装置により、患者さんの周りを治療装置が回転しながら照射を行う、強度変調回転放射線治療(IMRTの進化版であるVMAT)が可能となりました。これにより、治療時間の短縮が可能となり、かつ放射線の線量分布が改善する場合もあります。

図6. 頭頸部がん(下咽頭がん)への強度変調回転放射線治療の照射野

放射線治療装置に内蔵されたコンピュータ制御の「しぼり」により、放射線の強さや照射範囲を調節しています。黄色~緑色の部分が最終的に強く放射線が照射されている部分で、薄い青色の部分にはそれより低い線量の放射線が照射されています。強い放射線が当たってほしい場所、やや弱い放射線で十分な場所、放射線を当てたくない場所を区別して、患者さんごとに適切な放射線照射を行っています。

図7. 頭頸部がん(下咽頭がん)への強度変調回転放射線治療の線量分布図

腫瘍の部分を赤く表示しています。腫瘍に集中して強い放射線が照射されていることが分かります。リンパ節転移が起こりやすい頸部リンパ節領域にも予防的に中等度の線量の放射線を照射しています。
放射線治療に伴う症状を軽減するために、唾液腺や口腔内などの腫瘍以外の組織の線量を制限しています。

図8.肺癌への強度変調回転放射線治療の線量分布図

肺癌に対して強度変調回転放射線治療も行っています。これまで、正常組織を守りながら放射線治療が行うの難しかった広い範囲におよぶ肺がんにも治療が可能になりました。

図9.前立腺癌への強度変調回転放射線治療の線量分布図

当院では前立腺癌に対して、前立腺に強く照射を行い、膀胱や直腸の線量を下げるために、強度変調回転放射線治療で照射を行っております。
また、従来の治療に加えて、新たに治療療期間を短縮した照射にも取り組んでおります(寡分割照射)。今までの放射線治療より、一回に照射する放射線量を多くすることで、治療期間を2ヵ月程度から1ヵ月程度に短縮することができます。腫瘍に対する効果は通常の照射期間で行った場合と遜色ないと報告されています。

小線源治療(子宮がんや前立腺がんなど)

放射性同位元素(放射線を出す物質)を入れた小さなカプセル(小線源)を用いる治療で、病巣の至近距離から強い放射線を集中的に照射できる治療です。

小線源治療は子宮がんの治療において、重要な役割を果たします。子宮がんの小線源治療では、治療直前にCT画像で放射線の分布を確認する画像誘導小線源治療を導入しています。画像誘導小線源治療の導入により子宮頸がんの治療成績は大幅に向上しました。

前立腺癌に対しても小線源治療が有効です。2004年8月よりヨウ素-125を用いた永久挿入前立腺小線源治療を行っています。この治療の主な対象は低・中リスクの前立腺がんです。この治療により良好な治療成績が得られています。

診療実績について

放射線治療患者数

 
2025年
呼吸器
187
消化器
90
乳腺
154
婦人科
37
頭頸科
42
泌尿器
74
血液
15
その他(骨軟部, 原発不明癌)
25
合計
624

( ):再診例を含む全症例

定位放射線治療件数

 
2025年
36
40
6
骨転移
15
リンパ節転移
3
副腎,その他
3
合計
103

強度変調放射線治療の件数

 
2025年
前立腺
34
頭頸部
31
婦人科
28
19
消化器
10
乳腺
8
骨・軟部
2
合計
132

小線源治療の件数

 
2025年
前立腺がんシード治療
10
婦人科小線源治療
12
合計
22

関与する臨床試験

  • 頭頸部がん:JCOG1912
  • 肺がん:JROSG17-4、JCOG1408、JCOG1914、JCOG1906、JCOG1916、JapicCTI-195069
  • 食道がん:JCOG1109、JCOG1510、JCOG1904
  • 大腸がん:JCOG1612、JCOG1801、JCOG1912
  • 子宮頸がん:JCOG1402

関与する治験

  • 頭頸部がん:TrulynX – Debio 1143-SCCHN-301
  • 肺がん:NRG-LU005
  • 食道がん:OBP 101 JP
  • 子宮頸がん:KEYNOTE A018/ENGOT-CX11

業績

スタッフ紹介

放射線治療部長濱本 泰(はまもと やすし)

専門領域

放射線治療

認定資格
  • 日本医学放射線学会 放射線治療専門医
  • 日本医学放射線学会 指導医
  • 日本放射線腫瘍学会 放射線治療専門医
  • 第1種放射線取扱い主任者

医師神﨑 博充(かんざき ひろみつ)

専門領域

放射線治療

認定資格
  • 日本医学放射線学会 放射線治療専門医
  • 日本医学放射線学会 指導医
  • 日本放射線腫瘍学会 放射線治療専門医

医師長﨑 慧(ながさき けい)

専門領域

放射線治療

認定資格
  • 日本医学放射線学会 放射線治療専門医
  • 日本医学放射線学会 指導医
  • 日本放射線腫瘍学会 放射線治療専門医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医