放射線治療科

放射線治療について

「放射線治療」は、「外科療法」、「薬物療法」と並ぶがん治療の3本柱の一つで、多くのがんに有効です。

放射線治療には、放射線でがんの根治を目指す根治的放射線治療、がんによる痛みなどの苦痛を緩和する緩和的放射線治療、手術後の再発予防を目的とした術後放射線治療などがあります。

最近の治療装置と治療技術の進歩はめざましく、高精度な放射線治療が可能となりましました。放射線をがん病巣に集中させることにより、放射線の副作用を抑えながら、十分な治療効果を引き出すことが可能となっています。

四国がんセンターの放射線治療について

四国がんセンター放射線治療科は、愛媛県内でも有数の放射線治療実績を有しており、年間のべ750名程度(うち新患は550名程度)の患者さんの放射線治療を行っています。

当院では、特に高精度放射線治療に注力しており、IMRT (強度変調放射線治療)、定位放射線治療、画像誘導小線源治療を積極的に行っています。これらの高精度放射線治療を取り入れることにより、放射線治療成績は以前と比べて飛躍的に向上しました。

また、新しい治療を開発し、医学の進歩に貢献したりするために、臨床試験や治験などにも積極的に参加しております。

高精度放射線治療
適応となりえるがん
IMRT(強度変調放射線治療)
頭頸部がん
肺がん
食道がん
前立腺がん
子宮がん
など
定位放射線治療
早期肺がん
小さい肝臓がん
脳転移
肺や肝臓などの少数の転移
脊椎転移
など
画像誘導小線源治療
子宮頸がん

図1. 新治療装置(2018年4月より導入)

特徴的な治療の説明

定位放射線治療(肺や肝臓の腫瘍、脳転移などに対して)

定位放射線治療は、メディアでピンポイント照射などと紹介されている場合もあります。様々な角度・方向から、狭い範囲に放射線を集中させることで、腫瘍には十分な放射線を当てながら、腫瘍以外の組織に照射される放射線を低減することを目的とした治療法です。当院では以前より、肺や肝臓の腫瘍に対して、定位放射線治療を行っており、十分な経験・実績を有しております。

また、2018年4月より、新治療装置を導入したことにより、複数の脳転移に対する定位放射線治療も可能となりました。腫瘍の大きさや場所にもより、事前に準備を行う必要がありますが、6箇所以下の脳転移であれば1日1回、60分以下で治療を終えることが出来ます。

図2. 左肺腫瘍への体幹部定位放射線治療の線量分布図

様々な角度方向から左肺の腫瘍に放射線を集中させて照射を行います。腫瘍の部分は強く放射線が照射され、腫瘍以外の組織の放射線量は低減されています。

図3. 肺癌多発脳転移(6箇所)の脳造影MRI画像

1mm未満の脳転移を疑う腫瘍が脳に6箇所あります。

図4. 多発脳転移への定位放射線治療の照射野

治療装置が患者さんの周りを回転しながら照射を行います。腫瘍に放射線が集中するように、角度を変えて何度か照射を繰り返します。

図5. 多発脳転移への定位放射線治療の線量分布図

腫瘍に集中して放射線が照射され、それ以外の組織の線量は低減されています。

強度変調放射線治療(前立腺癌や頭頸部がんなどに対して)

強度変調放射線治療は、放射線の強さや照射範囲をコンピュータ制御することによって、腫瘍以外の組織が受ける線量を制限しつつ、安全に腫瘍への線量の増加を行うことができます。主に前立腺癌や頭頸部がんの患者さんの治療に用いています。

2018年4月より導入した新治療装置により、患者さんの周りを治療装置が回転しながら照射を行う、強度変調回転放射線治療が可能となりました。これにより、治療時間の短縮が可能となり、かつ放射線の線量分布が改善する場合もあります。

図6. 頭頸部がん(下咽頭がん)への強度変調回転放射線治療の照射野

治療装置内の放射線を遮蔽する鉛板が移動することで、放射線の強さや照射範囲を制御しています。黄色~緑色の部分が最終的に強く放射線が照射されている部分で、薄い青色の部分にはそれより低い線量の放射線が照射されています。患者さんの周りを回転しながら照射を行っています。

図7. 頭頸部がん(下咽頭がん)への強度変調回転放射線治療の線量分布図

腫瘍の部分を赤く表示しています。腫瘍に集中して放射線が照射されていることが分かります。リンパ節転移の頻度が高い頸部リンパ節領域にもそれより低い線量の放射線を照射しています。
放射線治療に伴う症状を軽減するために、唾液腺や口腔内などの腫瘍以外の組織の線量を制限しています。

図8.肺癌への強度変調回転放射線治療の線量分布図

肺癌に対して強度変調回転放射線治療も開始しております。これまでの放射線治療で照射が難しい症例に照射が可能になる場合があります。また、正常臓器の線量を低減することで、副作用を減らす事が期待されます。

図9.前立腺癌への強度変調回転放射線治療の線量分布図

当院では前立腺癌に対して、前立腺に強く照射を行い、膀胱や直腸の線量を下げるために、強度変調回転放射線治療で照射を行っております。
また、従来の治療に加えて、新たに治療療期間を短縮した照射にも取り組んでおります(寡分割照射)。今までの放射線治療より、一回に照射する放射線量を多くすることで、治療期間を7.5週間から5.5週間に短縮することができます。腫瘍に対する効果は通常の照射期間で行った場合と遜色ないと報告されています。

小線源治療(子宮がんや前立腺癌に対して)

小線源治療は、放射性同位元素(放射線の出る物質)を用いて行う治療で、線源の周りに集中して高い線量を与えることができる治療です。
小線源治療は子宮がんの治療において、重要な役割を果たす放射線治療です。放射性同位元素のなかでイリジウム-192を用いた高線量率照射装置は、愛媛県内では愛媛大学、当院の2施設にのみ装備されております。治療成績の向上のために、子宮がんの小線源治療を行う際にCTを撮影し、腫瘍や直腸などの臓器を考慮する画像誘導小線源治療も行っております。

前立腺癌に対しても小線源治療が行われています。2004年8月よりヨウ素-125を用いた永久挿入前立腺小線源治療を行っています。愛媛県内では、当院を含め、3施設(愛媛大学附属病院、松山赤十字病院)で行っております。

診療実績について

放射線治療科取り扱い新患数の年次推移

 
2017年
2018年
2019年
2020年
2021年
乳腺
180
178
155
183
152(173)
呼吸器
128
137
164
155
133(227)
婦人科
37
32
39
33
38(49)
頭頸科
36
41
37
22
39(46)
泌尿器
59
62
60
79
87(101)
消化器
72
101
67
86
69(101)
血液
17
9
18
18
10(11)
その他
11
14
12
11
19(42)
総計
540
573
552
587
558(738)

( ):再診例を含む全症例

定位放射線治療件数

定位
照射
症例数
2017年
2018年
2019年
2020年
2021年
23
41
33
33
38
6
35
36
35
38
肝、その他
0
1
0
2
6
total
29
77
69
70
92

強度変調放射線治療の件数の年次推移

IMRT
症例数
2017年
2018年
2019年
2020年
2021年
前立腺
29
30
42
52
52
頭頸部
25
23
23
19
35
婦人科
2
8
1
9
8
0
0
4
13
15
1
1
3
4
8
total
57
62
73
97
118

関与する臨床試験

  • 頭頸部がん:JCOG1912
  • 肺がん:JROSG17-4、JCOG1408、JCOG1914、JCOG1906、JCOG1916、JapicCTI-195069
  • 食道がん:JCOG1109、JCOG1510、JCOG1904
  • 大腸がん:JCOG1612、JCOG1801、JCOG1912
  • 子宮頸がん:JCOG1402

関与する治験

  • 頭頸部がん:TrulynX – Debio 1143-SCCHN-301
  • 肺がん:NRG-LU005
  • 食道がん:OBP 101 JP
  • 子宮頸がん:KEYNOTE A018/ENGOT-CX11

業績

スタッフ紹介

放射線治療部長濱本 泰(はまもと やすし)

専門領域

放射線治療

認定資格
  • 日本医学放射線学会 放射線治療専門医
  • 日本医学放射線学会 指導医
  • 日本放射線腫瘍学会 放射線治療専門医
  • 第1種放射線取扱い主任者

医師神﨑 博充(かんざき ひろみつ)

専門領域

放射線治療

認定資格
  • 日本医学放射線学会 放射線治療専門医
  • 日本医学放射線学会 指導医
  • 日本放射線腫瘍学会 放射線治療専門医

医師長﨑 慧(ながさき けい)

専門領域

放射線治療

認定資格
  • 日本医学放射線学会 放射線治療専門医
  • 日本医学放射線学会 指導医
  • 日本放射線腫瘍学会 放射線治療専門医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医