上顎がん
上顎がんは鼻腔の両脇、頬部(ほっぺた)の骨の中にある上顎洞という空洞にできたがんのことです。鼻腔の横にある空洞は上顎洞も含めて副鼻腔(ふくびくう)といいます。早期の段階では鼻づまりや鼻汁、頬部痛など蓄膿症に似た症状を呈することが多く、がんと認識しにくい病気です。一方で骨を破壊して周囲に広がると、複視(ものが二重に見える)、頬部の腫れ、出血などがみられます。
上顎がんの診断
上顎がんの診断にはレントゲンやCT、MRIなどでおこないます。確定診断は腫瘍組織を局所麻酔下に採取して病理診断で行います。
上顎がんの病期
T:鼻副鼻腔病変 N:頸部リンパ節転移 M:遠隔転移
病期 |
T1 |
T2 |
T3 |
T4a |
T4b |
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N0 |
Ⅰ期 |
Ⅱ期 |
Ⅲ期 |
ⅣA期 |
ⅣB期 |
N1 |
Ⅲ期 |
Ⅲ期 |
Ⅲ期 |
ⅣA期 |
ⅣB期 |
N2 |
ⅣA期 |
ⅣA期 |
ⅣA期 |
ⅣA期 |
ⅣB期 |
N3 |
ⅣB期 |
ⅣB期 |
ⅣB期 |
ⅣB期 |
ⅣB期 |
M1 |
ⅣC期 |
ⅣC期 |
ⅣC期 |
ⅣC期 |
ⅣC期 |
上顎がんの治療
上顎進行がんでは顔面の変形や視力障害などの可能性があり、治療においても機能面と整容面の両方に留意する必要があります。一般に手術・放射線治療・化学療法を組み合わせた集学的治療がとられます。抗がん剤の静脈投与を併用する化学放射線治療もよく用いられますが、血管内治療の可能な施設では超選択的動注化学療法と放射線治療の同時併用療法が行われることもあります。手術は病巣の広がりによって上顎部分切除術、上顎全摘術、上顎拡大全摘術、頭蓋底手術などに分類されます。部分切除術をのぞく多くの手術では失われた部分を腹直筋皮弁などの遊離組織移植や顎義歯で再建する必要があります。