胃がん

胃の場所、働き

胃の場所 胃の働き

胃は消化管のひとつで、みぞおちあたりに存在します。口から摂取した食物が、食道を通って胃にたどりつき、消化に適した状態になってから腸へ送り出されます。

胃の大きさは大人のこぶし3個分ほどで、入口(食道とつながっている部分)を噴門部、出口(十二指腸につながる部分)を幽門部、それ以外の部位を胃体部といいます。噴門や幽門という呼び名は、切除方法の名前にも出てきます。

胃の主な働きは、
(1)食物の貯留(しばらく貯めておいて)
(2)撹拌(胃酸や粘液と混ぜ合わせて)
(3)輸送(消化に適した状態にして少しずつ腸に送り出す)
です。

胃がんの進行度(ステージ)の決め方

胃がんは、主にピロリ菌という細菌感染を原因として、胃粘膜にできます。細胞が増大してくると、みぞおちの痛み、食事の通りにくさ、貧血といった様々な症状を引き起こしますが、無症状で検診の胃カメラによって発見されることも多い病気です。

胃カメラやバリウム胃透視(造影検査)で病気が発見されたら、細胞の一部をとって(生検)顕微鏡で確定診断をつけます。次に、それぞれの病状に合った適切な治療法を検討するため、CT検査などで進行度を診断します。

胃がんの進行度(ステージ)はⅠからⅣに分類され、数字が大きいほど進行した状態を示します。進行度は、がんの大きさや転移の有無などの要素を複合して決定されるもので、がんの治療法を決める指針になります。(ただし、術前の診断と、摘出した組織を病理医が顕微鏡で詳しく調べて出される最終的な病理結果は、異なる場合があります。)

TNM分類
ステージ 深達度(T) リンパ節転移(N) 遠隔転移(M)
ステージⅠ
T1a/T1b,T2
なし(N0)
なし(M0)
ステージⅡA
T1a/T1b,T2
あり(N+)
なし(M0)
ステージⅡB
T3,T4a
なし(N0)
なし(M0)
ステージⅢ
T3,T4a
あり(N+)
なし(M0)
ステージⅣA
T4b
Nに関わらず
なし(M0)
ステージⅣB
Tに関わらず
Nに関わらず
あり(M1)

日本胃癌学会編「胃癌取扱い規約第15版(2017年10月)」(金原出版)より作成

胃がんの進行度に応じた治療法

早期がん(ステージⅠ)

内視鏡

ステージⅠのうち、がんが小さい(粘膜に近い層にとどまっている)ものは内視鏡で治療可能な場合があります。検診で行う胃カメラと同様に、口から内視鏡を挿入し、特殊な内視鏡用ナイフで病変を剥がし取る治療法で、消化器内科医が行います。当然、お腹は切りませんし、全身麻酔も不要で、入院期間も短く済みます。ただし、この治療法の対象になるにはいくつかの条件がありますし、切除後の病理検査でリンパ節転移のリスクが高い、あるいはがんが取りきれていないと判明された場合は、追加で胃切除術・リンパ節郭清の手術治療を行う場合があります。

早期~進行がん(ステージⅠ~Ⅲ)

手術

がんが内視鏡では取りきれない場合、手術を行います。これは、病変部を含む胃の切除と、転移しやすいリンパ節を取り除くもので、全身麻酔で行います。術後は定期的な経過観察をしつつ、再発予防の術後補助化学療法を行う場合もあります。

切除不能がん・再発がん(ステージⅣ)

化学療法

手術が適さない病状の場合は、全身化学療法を行います。ただし、出血や食事の通過不良がある場合は、その症状を緩和するための手術や対症療法、放射線治療を行います。全身化学療法の効果で、がんが切除可能になれば、根治的な手術治療を行う場合もあります。

手術

胃の切除について

がんを取り除きつつ再発を防ぐための手術では、下記の3つが基本とされています。

3分の2以上の胃切除
リンパ節郭清
消化管再建
胃切除

しかし、胃を切除することは食生活を中心とした生活の質に影響します。そこで、胃癌治療ガイドラインでは、病状に応じて胃をなるべく残すための指針が定められています。

がんが幽門側のみ
がんが幽門(十二指腸につながる部分)側のみ
がんが噴門側まで拡がっている
がんが噴門(食道につながる部分)まで拡がっている
噴門の早期がん
噴門の早期がん
2/3以上
2/3以上
全摘
全摘
半分
半分

胃切除後のフォローについて

胃がんの手術では、胃を一部または全部取り除いた後、食道や十二指腸と胃をつなげています。方法はいくつかありますが、どの方法でも食物・消化液の通り道を確保して、手術後の消化・吸収への影響を少なくするよう努力しています。

Billroth I法
Roux-en-Y法
観音開き法再建
Billroth I法 Roux-en-Y法 観音開き法再建
胃と十二指腸を直接
つなぎ合わせます。
幽門側を切除した場合の方法です。
胃や食道を小腸と
つなぎ合わせる方法です。
噴門側胃切除後に食道と胃を
つなぎあわせる方法です。
この方法では胃酸が食道に逆流
しやすくなるのが問題ですが、
当院では逆流が起こりづらい
工夫をしています。

手術方法

開腹手術
腹腔鏡手術
ロボット支援下手術

上記の手術方法から、病状に応じて患者さんごとに最も適した手術方法を選択します。

開腹 腹腔鏡 ロボット
手術の傷 お腹に一直線の傷跡 カメラと手術器具のための穴を数か所 カメラと手術器具のための穴を数か所
特徴
基本の手術法
創(傷跡)が小さく、患者さんの負担が少ない
病状
進行がん・過去の手術で不足していた場合
早期がん
メリット
様々な状況に対応が可能
カメラ拡大効果
科学的根拠あり
動きが正確で高精度
最新の治療法
デメリット
創(傷跡)が大きい
創(傷跡)が小さい分、できることに限りがある
手術件数が少ないため、科学的裏付けはまだない

当科では2017年10月から「ロボット支援下胃切除術」を開始しました。
2018年8月より、厚生労働省の定める施設基準を満たして保険適応内での治療が可能となり、現在では胃がん手術(幽門側胃切除・胃全摘・噴門側胃切除)すべての術式で治療が可能です。
2021年12月までに50例以上のロボット支援下胃切除術を施行し、安全に導入できております。