精巣がん

1)精巣がんについて

精巣(睾丸)は、男性ホルモンを分泌すると同時に、精子をつくり生殖を可能にする役割があります。精巣がんにかかる割合は10万人に1人程度で比較的まれな腫瘍です。しかし他の多くの癌と異なり、20歳代後半から30歳台にかけて発症のピークがあり、若年者に多い腫瘍であることが大きな特徴です。精巣がんの危険因子としては家族歴(4-10倍)、停留精巣(2-8倍)があったこと、反対側の精巣に腫瘍があったこと(25倍)が良く知られています。

2)精巣がんの診断について

症状について

多くの場合痛みの無い陰のうの腫れで気づきます。転移による症状(腹痛、腰痛、息切れ、咳など)で発見されることもあります。

病期について

CT、MRIなどの画像検査と、腫瘍マーカー(AFP、HCG、LDH)採血により診断されます。

表1

Ⅰ(1)期 転移がない
Ⅱ(2)期 横隔膜以下のリンパ節にのみ転移がある
  Ⅱ(2)A 転移巣が5cm未満
  Ⅱ(2)B 転移巣が5cm以上
Ⅲ(3)期 遠隔転移
  Ⅲ(3)0 腫瘍マーカーが陽性であるが、転移巣不明
  Ⅲ(3)A 横隔膜より上部のリンパ節に転移
  Ⅲ(3)B 肺に転移
  Ⅲ(3)B1 片側の肺の転移が4個以下かつ2cm未満
  Ⅲ(3)B2 片側の肺の転移が5個以上または2cm以上
  Ⅲ(3)C 肺以外の臓器にも転移がある

 組織型はセミノーマと非セミノーマ(胎児性がん、縦毛がん、卵黄のう腫、奇形腫など)に分けて分類します。それぞれ国際分類によって予後良好群、中間群、不良群に分類されます。

3)精巣がんの治療について

手術について

高位精巣摘除術

確定診断のため下腹部を切開し陰のう内の精巣を摘除します。

後腹膜リンパ節郭清術

化学療法後に、後腹膜リンパ節(おなかの大血管周囲のリンパ節)を摘出することがあります。

放射線治療について

セミノーマでは放射線治療が特に有効で、Ⅰ期のセミノーマの再発予防、Ⅱ期のセミノーマの比較的小さなリンパ節転移に対し行うことがあります。

化学療法について

精巣がんは化学療法の効果が非常に高いとされ、転移のある場合でも化学療法により根治が期待できます。複数の作用の異なる抗がん剤を組み合わせて治療を行います。
当院ではBEP療法、EP療法、TIP療法、GEMOX療法などを行っております。

治療前の精子保存について

病気のある精巣の摘除、抗がん剤投与などで数年間正常な精子が作れなくなったり、精子ができなくなる可能性があります。そのため、希望者には治療前に近隣の産婦人科などに紹介し精子の凍結保存をおこなって頂きます。

4)精巣がんの治療法の選択に関して

治療法はセミノーマと非セミノーマで異なり、またステージ毎にそれぞれ推奨される治療法があります。

表3:セミノーマの治療

Ⅰ(1)期 経過観察
予防的放射線照射
カルボプラチン単剤で1-2コースの化学療法
Ⅱ(2)A期 放射線照射
化学療法(BEP3コース/EP4コース)
Ⅱ(2)B期以上 化学療法(BEP3コース/EP4コース)

表4:非セミノーマの治療

Ⅰ(1)期 脈管侵襲なし 経過観察
後腹膜リンパ郭清
脈管侵襲あり 経過観察
BEP2コース
後腹膜リンパ郭清
Ⅱ(2)A 2cm未満でマーカー陰性 後腹膜リンパ郭清(経過観察)
予後良好 BEP3コースまたはEP4コース
予後中間/不良 BEP4コース
Ⅱ(2)B以上 予後良好 BEP3コースまたはEP4コース
予後中間/不良 BEP4コース

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