日本人の主な皮膚がんで多いものは1.悪性黒色腫 2.扁平上皮癌 3.パジェット癌 4.基底細胞癌です。特に1の悪性黒色腫は悪性度の高いがんです。
1. 悪性黒色腫
皮膚がんの一種で、皮膚の色素(メラニン)をつくる細胞または母斑(ほくろ)細胞ががん化したもので、メラノーマとも呼ばれます。初期はほくろと区別が難しいがんです。
悪性黒色腫は、足の裏や手のひら、爪、顔、胸、腹、背中など様々な部位にできます。また、眼球、鼻や口の中、肛門部などの粘膜にできることもあります。悪性黒色腫の原因はまだ明らかになっていませんが、紫外線や皮膚への摩擦、圧迫といった外からの刺激が関係していると考えられています。
日本では1年間に100万人あたり約10~20人で悪性黒色腫と診断されています。年齢が高いほど多くなります。できやすい場所は足の裏が最も多いですが体のどこにでもできます。
特長 早期発見のポイント
ほくろの変化に注意しましょう。形がいびつであったりギザギザしている。色の濃さにむらがある。急に大きくなった.急に黒さがました。ほくろに傷ができてジクジクしている。など急な変化があった場合は専門医を受診しましょう。また顔で6mm以上、体で1cm以上の大きさのほくろには特に気をつけましょう。
診断・検査
外来ではまず皮膚の性状を詳細にみる特殊なカメラ(ダーモスコピー)で観察し、疑いがある場合には皮膚生検(病変を切除して組織検査すること)を行い悪性黒色腫かどうかの判断をします。悪性黒色腫と診断された場合は転移の有無をCTやMRI、PETCTで検査を進めます。
治療
悪性黒色腫の治療は病変を切除する治療が優先されますが、他のがんと同じように病期(がんの進行の程度)別に治療法が異なってきます。進行したがんに対しては外科治療(切除)に薬物療法(抗がん剤治療)や放射線治療を組み合わせた治療を行います。
がん情報サービスHP 日本皮膚科学会編「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版(2015年)」、日本皮膚科学会雑誌;125(1),5-75より作成
2. 扁平上皮癌
扁平上皮癌は別名有棘細胞がんとも呼ばれ、日本人に多い皮膚がんの1つです。皮膚の表皮を構成する細胞のひとつである有棘細胞から発生するがんです。年間の発生数は不明ですが基底細胞癌に次いで多いがんです。
表皮と言って皮膚の浅い部分の細胞に有棘細胞があります。この細胞は平べったい形のため扁平上皮細胞とも呼ばれています。この脂肪ががん化したものです。原因として紫外線、ウイルス、きずあと(瘢痕)、放射線などが関係しています。
特長 早期発見のポイント
紅色で皮膚から盛り上がり表面にきずができてジクジクし、時に出血したりします。表面に細菌が付き膿を持つと臭いにおいがしてきます。
診断・検査
まず、皮膚生検(病変を切除して組織検査すること)を行い悪性黒色腫かどうかの判断をします。悪性黒色腫と診断された場合は転移の有無をCTやMRI、PETCTで検査を進めます。
治療
治療は病変を切除する治療が優先されますが、他のがんと同じように病期(がんの進行の程度)別に治療法が異なってきます。進行したがんに対しては外科治療(切除)に薬物療法(抗がん剤治療)や放射線治療を組み合わせた治療を行います。
がん情報サービスHP 日本皮膚悪性腫瘍学会編「科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第1版」(金原出版)より作成
病期別治療
0期
腫瘍の辺縁から0.5 cm 離して切除します。
I期II期
腫瘍の辺縁から1~2cm離して切除します。抗がん剤や放射線法を併用することがあります。
III期
腫瘍の辺縁から2~3cm離して切除します。リンパ節に転移がある場合はリンパ節をしっかりと切除します。同時に化学療法や放射線療法を併用することが多くなります。
IV期
化学療法や放射線療法が中心で手術も組み合わせることもあります。
3. パジェット癌(病)
主に汗を産生する細胞(パジェット細胞)ががん化する表皮内癌(転移などを起こさないがん)です。パジェット細胞は最初皮膚の浅い部分表皮の中だけに留まっていますが、がん細胞が皮膚のより深い部分真皮に及ぶとパジェット癌になります。一般にはパジェット癌も含めてパジェット病と呼ぶことが多いです。
特長 早期発見のポイント
乳房と外陰部にみられることがほとんどで、淡い紅色から鮮やかな鮮紅色皮膚の変化として気づく事が多いです。恥ずかしい場所にできるので、かくしている間に病気が進んでキズになり、ジクジクしてかゆさや痛みが出てきます。
診断・検査
皮膚生検(病変を切除して組織検査すること)でパジェット細胞がみつかれば確定されます。皮膚の深い部分にパジェット細胞がある場合には、転移がないかをCTやMRI、PETCTで検査します。
治療
手術で切除しますが、パジェット細胞のいるところから1~3cm離します。大きく切除することが多いので皮膚移植が必要なことが多いです。パジェット癌でリンパ節に転移がある場合はリンパ節郭清が必要です。病変の境界を見極めるのが難しいため再発が多い病気です。病期が進んでリンパ節転移が広がった場合は、放射線治療を行う事もありますが、有効な抗がん剤治療がないのが現状です。
4. 基底細胞癌
皮膚の表皮(皮膚の浅い部分)の基底細胞から発生する皮膚がんの一種です。皮膚がんの中では最も多く、悪さをしないがんです。顔のまんなか(鼻、まぶた、ほほ、口のまわり)にできやすく、原因は紫外線、傷あと、放射線などと言われています。
特長 早期発見のポイント
いびつな形をした黒いドーム状の事が多く、ゆっくりと大きくなってきます。病気が進と表面がくずれてジクジクして出血してきます。転移することはまずありませんが、まれに奥深くへとがんが育つことがあります。
診断・検査
皮膚生検(病変を切除して組織検査すること)で基底細胞癌がみつかれば確定されます。転移がないので追加の検査は必要ありません。
治療
手術で取り切れていれば定期的な診察で再発がないかを診るだけで心配いりません。追加で抗がん剤治療などはいりません。