骨軟部腫瘍

骨軟部腫瘍の動向

骨軟部腫瘍の頻度は低く、悪性腫瘍は肉腫と呼ばれ、希少がんの一つ

腕、脚、体幹の筋肉、骨、軟骨、脂肪、神経、線維組織から発生する腫瘍を骨軟部腫瘍と呼びます。良性と悪性がありますが、悪性のものは肉腫と呼ばれています。人口10万人あたり6例未満の頻度で認められるがんを希少がんと呼びますが、肉腫もその一つです。他のがんと違い数が少ないため、治療を行っている施設も限られています。また、頻度が少ないにもかかわらず、軟部腫瘍に限っても100通り以上の腫瘍に分類され、診断も難しい場合があります。

骨軟部腫瘍の診断

(1) 画像で腫瘍の大まかな分類や範囲を診断

1. 単純レントゲン
…骨腫瘍では典型的なパターンもあり、診断に役立つことがあります。

2. CT
…骨は非常に分かり易く、骨腫瘍で特に有効です。通常の撮影では筋肉と腫瘍の区別はつきにくいため、造影剤を使って撮影することがあります。

3. MRI
…腫瘍の範囲や、大まかな診断を行う上で非常に役に立つ検査です。

4. タリウムシンチグラム
…腫瘍の良性か悪性か調べたり(約8割の確率で正しいと言われています)、骨軟部腫瘍の化学療法の効果判定に有効です。

5. 骨シンチグラム
…骨が壊されているか、他の骨に転移しているかどうかを調べます。

6. PET-CT
…転移がないかどうか全身を調べる検査で、3~4時間かかります。

(2) 組織を採取して最終的な診断

骨軟部腫瘍には、大きく分けて良性と悪性に分けることができます。また、悪性骨腫瘍では、そこの骨自体からがんができるもの(原発性)と、内臓にできたがんが血流などで飛んできてできるがん(転移性)があり、頻度的には、転移性のがんが多いです。種類によって治療方針が異なってくるので、多くの場合治療前には腫瘍の一部を採取して顕微鏡で診断を確定します。

•良性骨腫瘍
…骨軟骨腫、内軟骨腫など症状がなければ、経過観察のみとなります。

•中間型骨腫瘍
…骨巨細胞腫などは、生命には影響しませんが骨をどんどん壊していくため、手術が必要です。

•悪性骨腫瘍
…原発性悪性骨腫瘍(肉腫)には骨肉腫や軟骨肉腫などがあり、手術や化学療法、放射線治療などの対象となります。
…転移性骨腫瘍は内臓などに発生したがんが血流に乗って骨へ運ばれることによって発生する腫瘍で、肺がんや乳がん、前立腺がんで見られることが多いです。

•良性軟部腫瘍
…脂肪腫、平滑筋腫、神経鞘腫などほとんど大きさが変わらないものや、ゆっくり大きくなるもので症状が無ければそのまま経過をみることもできます。

•中間型軟部肉腫
…デスモイドなどは、生命に影響しませんが、サイズが大きくなることや、切除しても再発することが多く、定期的な経過観察が必要な腫瘍です。

•悪性軟部腫瘍(肉腫)
…脂肪肉腫、滑膜肉腫、粘液線維肉腫など基本的には手術で切除することが大切ですが、最近抗がん剤や分子標的薬など新規の薬剤が開発されています。

採取の方法としては、エコー検査で場所を確認しながら行う針生検や、CT針生検(CTを使って異常がある部位の位置を確認しながら、針を刺して組織を採取します)のほか、手術(切開生検)によって組織を採取する方法もあります。

がんの遺伝子診断

骨軟部腫瘍の中ではがんの遺伝子の特殊な異常(融合遺伝子といいます)を調べることで、診断が可能となる場合があります。化学療法を選択する上で参考にすることができます。

悪性骨軟部腫瘍(肉腫)の病期(ステージ)

悪性骨軟部腫瘍(以下肉腫と略します)も細かな病期分類がありますが、他の場所に転移しているかどうかで治療法が異なってきます。転移がない(限局性)、転移がある(転移性)に分けてつぎの治療法を説明します。

悪性骨軟部腫瘍(肉腫)の治療

肉腫の3大治療は『手術』、『化学療法』、『放射線治療』

肉腫の3大治療は『手術』『化学療法(抗がん剤治療)』『放射線治療』です。主にがんの種類や進行度によって選べる治療が決まってきます。

肉腫の手術

手術対象となるのは主にほかの臓器へ転移してない場合です。腕や脚に肉腫を認める場合、昔は切断となっていましたが、現在は切断せず、MRIの進歩で肉腫を、少し余裕を持って安全に切除することが可能になっています(進行具合によって約1割から2割の患者さんでは現在でも切断となっています)。
写真は大腿骨を肉腫ごと切除し、チタン製の人工物で置き換えた患者さんで、通常の日常生活を送ることが可能です。

肉腫の化学療法

化学療法とは抗がん剤により、がん細胞を減少させ増殖を抑える治療法です。注射によって投与された抗がん剤は、血流に乗って全身に運ばれるため、全身をカバーした効果が期待できます。
肉腫に対して用いられる主な『細胞障害性抗がん剤(いわゆる抗がん剤)』は、肉腫の種類で選択されます。骨肉腫、ユーイング肉腫では化学療法の効果が高く、治療成績向上には欠かせない治療です。最近軟部肉腫に対して使用できる抗がん剤の種類が増え、治療の選択肢が増えてきています。軟部肉腫に対する『分子標的薬』も保険による治療が可能となっています。

肉腫の放射線療法
既にほかの臓器に転移していたり、ご高齢などの理由で手術による身体への負担に耐えられない場合、放射線による治療が可能です。一般的に肉腫の場合、放射線治療の効果はそれほど高くないとされていますが、ユーイング肉腫や粘液型脂肪肉腫といったタイプの肉腫は比較的効きやすいとされています。通常の放射線治療のみでは完全に肉腫を消滅させることはできませんが、最近の機器や技術の進歩で以前に比べ縮小効果がみられるケースが増えています。