希少がん

子宮肉腫について

動向

肉腫とは、骨や、筋肉、脂肪、血管などの軟部組織から発生する悪性腫瘍です。“がん”と比べて発生頻度が低いため十分な研究がなされておらず、診断や治療が難しい病気です。婦人科臓器では主に子宮の筋肉や支持組織から発生します。
子宮肉腫は子宮に発生する悪性腫瘍の約3-7%を占めるにすぎず、その中でも子宮平滑筋肉腫の頻度が高い。悪性度は非常に高く、生存期間の中央値は5年も満たない状況です。

症状と診断

子宮肉腫の症状は腹部膨満感や不正出血など、特異的な症状ではありません。子宮筋腫との区別が難しく、閉経後に子宮の腫瘤が急激に大きくなるなどの臨床経過や子宮筋腫として手術を行った後に病理検査で診断が判明することも珍しくありません。したがって、エコーやMRIで肉腫の疑いを指摘されることがありますが、最終的には摘出された病変の病理検査で診断される場合がほとんどです。
子宮肉腫の中には良・悪性の判定も困難な症例が存在し、日常診療では診断に苦慮することが多々あります。

進行度(ステージ)と治療について

以下の進行期は子宮肉腫の中で、子宮平滑筋肉腫/子宮内膜間質肉腫の進行度(ステージ)です。

I期 腫瘍が子宮に限局する
Ⅱ期 腫瘍が骨盤腔に及んでいる
Ⅲ期 腫瘍が骨盤外に及んでいる
Ⅳ期 腫瘍が膀胱、直腸の粘膜に及ぶか遠隔転移している。

治療については外科的切除(手術)、抗がん剤、放射線を組み合わせて行われます。

手術について:子宮平滑筋肉腫に関しては手術による摘出が最も効果的な治療法です。病巣を完全に摘出することが目標ですが、摘出時で腫瘍を細切する方法は再発を誘発するので勧められません。
低異型度子宮内膜間質肉腫では、ホルモン治療に有効なことがあるため、機能温存手術などの検討が模索されています。

抗がん剤治療:子宮肉腫に対して使用される最も一般的な抗がん剤はドキソルビシン、イホマイドやドセタキセル、ゲムシタビン療法です。進行例や再発時にはパゾパニブ、トラベクテジン、エリブリンなどが使用されることもあります。

悪性中皮腫について

動向

中皮とは胸であれば肺や心臓、お腹であれば胃や腸などの臓器を覆ている膜の事です。この膜から発生したがんが『悪性中皮腫』です。肺を覆う『胸膜』から発生する、『悪性胸膜中皮腫』が最も多い中皮腫で、アスベスト(石綿)の吸入が一因になります。
悪性中皮腫による死亡者数は年間1500人を超え、増加傾向にあります。アスベストは2012年から全面的に使用が禁止されていますが、それまでに使用された建築物などは現存しています。加えて、アスベスト曝露から悪性中皮腫の発生までが平均で40年程度と長い事から、2025年ごろまでは患者数が増え続けると言われています。

症状と診断

悪性中皮腫は早期にはほとんど症状がありません。進行すると、悪性胸膜中皮腫では胸水、悪性腹膜中皮腫では腹水が貯まり、それぞれ、呼吸困難感や腹部膨満感などの症状が出てきます。
診断は胸水や腹水を検査することで得られることもありますが、正確な診断のためには、組織の一部を採ってくる『生検』が行われます。生検の方法はエコーやCTを見ながらの針生検か手術によるものが一般的です。
生検によって得られた組織は、病理検査で『上皮型』、『二相型』、『肉腫型』に分類されます。この分類は治療方針の決定に重要です。

進行度(ステージ)と治療について

以下は中皮腫の中で、大多数を占める『悪性胸膜中皮腫』について述べます。
進行度(ステージ)については、国際中皮腫会議(IMIG)による分類が一般的です。

I期 腫瘍が片方の中皮のみにある
Ⅱ期 腫瘍が片方のみの中皮から肺や横隔膜に及んでいる
Ⅲ期 腫瘍が片方の中皮全体から心臓の膜など切除の可能性が残る部位に及んでる
Ⅳ期 腫瘍が胸壁(肋骨とその間の筋肉)や反対の胸膜、リンパ節などの切除不能な部位に及ぶか胸腔外(腹部や骨、頭部など)に転移している。

治療については外科的切除(手術)、抗がん剤、放射線を組み合わせて行われます。

手術について:手術は多くの場合、病理検査で『上皮型』と診断された場合にのみ行われます。また、手術の効果自体がはっきりしていない点も多く、手術するか否かについては、経験のある呼吸器外科医と呼吸器内科医の総合的な判断が必要です。
手術には片方の肺と胸膜を切除する『胸膜肺全摘術』と、胸膜だけを剥ぎ取る『胸膜剝皮術』があります。胸膜肺全摘術は大きな手術になりますので、体力的に耐えられる例に限られます。胸膜剝皮術は比較的新しい手術法です。胸膜肺全摘術と胸膜剝皮術のどちらが優れているかについては、まだ明確なデーターはありません。
手術後は、胸膜肺全摘術後には放射線+抗がん剤、胸膜剝皮術については抗がん剤の補助療法が行われます。

抗がん剤治療:悪性胸膜中皮腫に対して使用される最も一般的な抗がん剤はペメトレキセドとシスプラチンです。抗がん剤が効果を示さなくなってきた(がんが増大してきた)場合には免疫チェックポイント阻害薬が使用されることもあります。

補足

中皮腫の患者さんには、公的補助制度があり、医療費の補助されます。アスベストに曝露される仕事に従事されていた方に対する労働災害認定(労災)の申請と、労災に認定されなかった患者さんに対する石綿健康被害救済法に基づく申請です。

肉腫(サルコーマ)について

肉腫(サルコーマ)とは

がんは、上皮から発生する比較的頻度の高い癌腫(胃癌、大腸癌、肺癌、肝癌、乳癌、子宮癌など)は良く認知されていますが、頻度が低い(人口10万人に対し、6人以下)上皮以外の骨、軟骨、脂肪、筋肉、末梢神経、線維組織、血管などの非上皮性組織から発生するがんを、肉腫(サルコーマ)と呼んでいます。上皮は臓器の表面を覆う組織で、常に外界からの刺激に晒されているため遺伝子の損傷頻度が非上皮性組織に比べ、高いことなどの要因で癌化しやすいと考えられています。骨、筋肉、末梢神経などを扱う整形外科領域では、特に四肢に発生するがんは転移したのもを除いて、ほぼ肉腫であるため整形外科が担当することが多い領域ですが、子宮や後腹膜、乳房、内臓器にも稀に発生することがあり、その診断、治療には多科連携による集学的アプローチが必要な領域とされています。また整形外科領域では、診断や治療様式の違いから、肉腫を骨や軟骨から発生する肉腫と、軟部組織(脂肪、筋肉、末梢神経、線維組織など)から発生する軟部肉腫に大きく分類しています。

主に四肢に発生する軟部肉腫について

症状と診断

上肢、下肢、或いは背中、胸壁などに発生する軟部肉腫は体表に近いため、多くの場合局所の腫脹として気付きます。肉腫の場合一般的に月単位で次第に大きくなりますが、悪性度が低いものでは年単位の場合もあります。疼痛は炎症が強いケースや、神経から発生したもの、また肉腫に隣接する神経を巻き込むものでは認められますが、無痛であることも稀ではありません。 このような腫瘍を認めた場合、行う検査としてはMRIで発生部位や性状を調べた後に、針生検や切開生検により組織診断を行います。軟部肉腫は稀な疾患ですが、病理分類は30種類以上に亘るため、確定診断には専門性が要求されます。

進行度と治療について

軟部肉腫の診断がつけば、PET-CTや造影CTで転移の有無について検索します。転移は殆どのケースで肺に認められ、横紋筋肉腫、粘液型脂肪肉腫など組織型によってはリンパ節転移や肺以外の様々な部位に転移する場合があります。転移が無い場合とある場合で治療は異なってきます。

転移が無い場合:
基本的に手術で切除しますが、腫瘍のみの切除では再発するリスクが非常に高いため、周囲の組織をある程度含めて切除する広範切除術を行います。その際に必要な皮膚や血管の欠損が生じた場合は移植術を併用する場合があります。また再発をさらに抑えるため、術後に放射線を照射する場合もあります。転移発生のリスクを下げる目的で、術前や術後に化学療法を併用する場合もあります。

転移がある場合:
診断時に転移が認められた場合、基本的には局所の切除術は施行せず、化学療法や放射線療法を行います。最近軟部肉腫に保険適応をなった薬剤の種類が増え、転移した場合でもある程度の効果を認めています。転移を認めた場合でも、摘出によるメリット、デメリットを評価したうえで切除術を検討することがあります。

後腹膜腔に発生する肉腫について

症状と診断

後腹膜腔とは、腹膜腔の背側で、腸管が存在する膜腔の後壁との間のスペースで、腎臓や尿管、大動静脈などの臓器の一部や腸腰筋、腰神経叢などがある場所です。脂肪組織が豊富で脂肪肉腫の好発部位でもあります。この部位は体表からは触れず、ある程度大きくなるまで気付かないため、初診の段階で巨大な腫瘍を形成していることが稀ではありません。PET-CT、MRIを施行し、可能であれば針生検を行い、組織診断を行います。

治療について

巨大な腫瘤を認める場合でも、転移していないことが多く、発生部位が泌尿器科、婦人科、消化器外科、整形外科などの領域に亘るため、手術、放射線治療、化学療法を組み合わせた治療を放射線科や病理医を含めた多診療科で検討します。手術や放射線療法が困難なケースでは化学療法が選択されます。