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科学的根拠に基づいた統合腫瘍学のための臨床実践ガイドライン(2009)

出典:Deng GE, et al: Evidence-based clinical practice guidelines for integrative oncology: Complementary therapies and botanicals. J Soc Integr Oncol 7: 85-120, 2009.
アメリカの統合腫瘍学会のガイドライン(2009)の要約を和訳(訳者:大野智、山下素弘)したものです。

Conclusions

統合腫瘍学は、癌患者が身体的、精神的、スピリチュアルに安定することを手助けするために、多岐にわたる分野で実証され、主となる治療に加えたり補う形で実践されています。補完代替医療は、がん患者に通常「非公式」に普及しています。こういった医療は多種多様で、セオリー、実践法、安全性や有効性なども様々です。症状の緩和に有効なこともあります。
補完医療(主となる治療に加えられる)は統合腫瘍学の実地臨床では、通常の腫瘍治療に以前と比べて、より併用される傾向にあります。栄養健康補助食品、ハーブ、また他の植物由来のものは、化学療法、放射線治療、外科的治療に対する悪影響や相互作用がまだはっきりと分かっていないため、問題を生じる可能性があります。ですが、患者がこういった治療を受けないのであれば、有効なこともあります。しかし、効果的な治療を受ける前の患者にとっては、主たる治療にとってかえることは危険です。患者を手助けしている皆が、危険性を避け利益となるような補完医代替療法を的確に評価できることが重要です。信頼でき、リスクと利益の議論が十分にされている情報を含め、患者の懸念とニーズに対処できるような、患者中心のアプローチがされるべきです。信頼性のある情報から有効性、科学的根拠やリスクのレベルを検証し、明確なアドバイスがされるべきでしょう。

Summary of Recommendations

The Clinical Encounter Complimentary and Alternative Therapies (補完代替治療との邂逅)

利点良い臨床例あり

欠点なし

  • がん患者の初診時の問診の一環として、補完代替医療の使用について尋ねましょう。

推奨レベル1C(強く進められる(質の低い科学的根拠あり))

  • 全てのがん患者は専門家によって補完医療の利点と限界について、偏見なく、オープンで、科学的根拠に基づいて、患者中心の考え方で、説明されるべきである。患者は、治療方法やその治療の本質、可能性のあるリスクと利益について、また現実的に期待できる点について十分説明されるべきです。

推奨レベル1C(強く進められる(質の低い科学的根拠あり))

Mind-body Medicine (心身療法)

利点安全性あり、はっきりとした効果あり

欠点時間がかかる

  • 心身療法は、統合的なアプローチの一部として不安や動揺、慢性的な痛みを軽減し、QOL(生活の質)を向上させる総合医療の一つとして推奨される。

推奨レベル1B(強く進められる(質の中等度の科学的根拠あり))

  • サポートグループ、支持療法または、感情表出セラピー、認知行動療法、ストレス管理は、統合的なアプローチの一部として、不安や動揺、慢性的な痛みを軽減し、QOL改善する。

推奨レベル1A(強く進められる(質の高いい科学的根拠あり))

Touch Therapies (接触療法)

利点安全性あり、施術をすぐに受けられる

欠点なし

  • 不安や痛みを抱えているがん患者にとってがんの知識を持ったマッサージ療法師によって施されるマッサージ療法は、統合的なアプローチの一部として薦められる。

推奨レベル1C(強く進められる(質の低い科学的根拠あり))

  • 強く押したり圧迫することは、癌病変の近傍、腫大したリンパ節、放射線治療の照射部、(静脈内留置カテーテルのような医療機器部位や、術後変化のある部位や出血傾向のある患者に対しては薦められない。

推奨レベル2B(弱く進められる(中等度の科学的根拠あり))

Physical Activity (身体活動)

利点はっきりとした効果あり、安全性あり

欠点なし

  • 定期的運動がん患者に多くの利点をもたらす可能性があります。基礎的な健康状態を増進するための身体運動の指針(やり方、ガイドライン)を、専門的知識家に紹介されるべきである。

推奨レベル1B((強く進められる(中等度の科学的根拠あり))乳がん治療後の患者では1A)

Energy Therapies (エネルギー療法)

利点安全性あり

欠点はっきりとした効果なし

  • 生物エネルギーの考えに基づいた施術はストレス軽減とQOLの向上にある程度の有効かもしれない。疼痛や倦怠感の軽減といった症状管理に対する有効性には、限定的です。

推奨レベル不安の解消目的には1B。痛み、疲労感その他の症状管理目的には1C

Acupuncture (鍼治療)

利点はっきりとした効果あり

欠点施術を直ちには受けられない

  • 鍼治療は、疼痛管理が不良の時、抗がん剤治療や麻酔に関連する悪心・吐き気で薬物対処がうまく行かいない場合、その他の治療の副作用が著しい時は、補完治として推奨されます。

推奨レベル1A

  • 鍼治療は放射線治療によって起こる口内乾燥に対して、補完治療の一つとして推奨されます。

推奨レベル1B

  • 鍼治療は、閉経後の女性に起こる血管運動性の症状(顔面紅潮)に対して、偽治療と比べて上回る効果はありません。しかし、重い症状で薬物治療で効果がない患者には、鍼治療を試みてみても良い。

推奨レベル1B

  • どんな方法でも禁煙しない患者や、がんに関係する呼吸困難、倦怠感、化学療法による神経障害、開胸手術後の疼痛のある患者にとって、鍼治療を試すことは有効です。しかし、より多くの臨床試験が行われることが望まれます。

推奨レベル2C(弱く薦められる(質の低い科学的根拠あり))

  • 鍼治療は鍼師資格を持った者によってだけ施術されるべきです。また、出血傾向のある患者には慎重になされるべきです。

推奨レベル1C

Diet and Nutritional Supplements (食事と栄養補助食品)

利点多くの患者が興味をもつ

欠点副作用があるかもしれない

  • 食生活とがん予防に関する研究は、安全で多種にわたった食品、飲料の栄養素を摂取している集団をもとにしたものです。ですから、栄養の適合性というのは、多種の食品から選択することで満たされなくてはなりません。栄養補助食品は、通常必要ではありません。

推奨レベル1B

  • がん患者は、基礎的な健康の増進のために、適切な栄養指導を受けることが推奨される。

推奨レベル1B

  • 最新の文献の情報に基づくと、特定の栄養補助サプリメントはがん予防のためには推奨されない。

推奨レベル1A

  • がん治療前に、栄養補助サプリメントの摂取の確認をするべきです。また、治療中の食事や栄養補助食品に関する指針や、適切な栄養状態の推進、腫瘍と治療に伴う症状の管理、増加する必要量の充足、不足する栄養の是正について説明されるべきです。

推奨レベル1B

  • 植物由来性の栄養補助サプリメントや、ビタミン・ミネラルの大量摂取に関しては、副作用の危険性や他の薬剤との相互作用の可能性も検証されるべきです。こういったものは、化学療法剤を含む他の薬と一緒に取ることで、悪影響を及ぼす可能性があるので、免疫療法、抗がん剤、治療放射線治療、術前には同時に摂取されるべきではありません。

推奨レベル1B

  • 抗がん効果がいわれる植物由来の製品を利用したいというがん患者には、知識をもった専門家にアドバイスを求めるべきです。相談の際に、専門家は患者をサポートし、現実的な予測について話し合い、可能性のある効果と危険性についても検証しないといけません。このような栄養補助食品の利用は、以下のような状況においてのみ限定されるべきです。つまり、入手可能な科学的根拠に基づいた効果対リスク比を臨床的に評価し、副作用のモニタリングをしっかりとする臨床試験であること。

推奨レベル1C

  • 治療中の栄養補助サプリメント摂取に関しては、がん生存者はサプリメント利用実態について評価されるべきで、適応があれば具体的な栄養補充を行うために、あるいは栄養不足を是正するために訓練された専門家に紹介されるべきです。高年齢のがん患者生存者では、栄養補助サプリメントは栄養不足の解消にもなるかもしれません。しかし、サプリメント摂取者している患者の多くは、得てして、サプリメントが必要な場合はわずかしかない。

推奨レベル2B

  

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