呼吸器外科

呼吸器外科について

四国がんセンター 呼吸器外科の特徴として、松山市内だけではなく、四国中央市・新居浜市の東予から宇和島市・愛南町の南予まで愛媛県・四国全域から来院される患者さんが多いことが挙げられます。
以下の図は、当院で初回治療として手術された肺がん患者さんを住所別に見た場合、愛媛県の各3地域でどれくらいの割合を占めるかを示したものです。各地域から、四国がんセンターに来院されていることが分かります。(愛媛県院内がん登録2022年より)

当院で手術を受けた患者さんの割合

診療実績について

四国1位の肺がん手術数

愛媛県で行われているCT検診により、小さな肺病変でも見つかるようになりました。肺がんの早期発見、早期治療を行うことで、術後5年生存率は全国がん拠点病院内で全国上位です。
当科では年間約250例の手術を行っています。肺がんが約190例、転移性肺腫瘍が約35例、縦隔腫瘍が15例で、肺がんの手術件数は四国地方で1位です。
また、近年は80歳以上の患者さんの手術も増えており、高齢者に対する肺がん手術数としては全国トップレベルです。松山市内だけでなく県外からも来院されます。
安全性についても、手術関連死亡は、過去5年間で0.2%という好成績です。

呼吸器外科手術件数

肺がんの手術について

肺がんの3大治療は『手術』、『薬物療法』、『放射線治療』

肺がんの3大治療は『手術』、『薬物療法』、『放射線治療』です。主にがんの種類(非小細胞肺がん、小細胞肺がん)や進行度によって選べる治療が決まってきます。
四国がんセンターでは、手術を行う『呼吸器外科』、薬物療法を行う『呼吸器内科』、放射線治療を行う『放射線治療科』の3科が連携して治療を検討しています。

肺がんの手術:早期肺がんは、肺を温存する縮小手術を積極的に行っています。

手術対象となるのは主にステージⅠ~ⅡとⅢAの一部です。肺は左右対称ではなく、右側が上中下の3つの袋、左側が上下の2つの袋に分かれています。それぞれの袋を『肺葉』と呼び、それぞれ『上葉』、『中葉』、『下葉』と名付けられています。また、左右の肺に囲まれた領域を『縦隔』と呼び、心臓や食道、気管などの重要な臓器がある場所です。肺はリンパ流が発達し、肺から縦隔へ多数のリンパ節が存在します。肺がんはこのリンパ節にも転移しやすいがんです。
肺がんの手術はがんが存在する肺葉と、そこからのリンパ流があると思われるリンパ節を切除する(これをリンパ節郭清と言います)が最も一般的な手術です。現在、がんが小さく、リンパ節転移の可能性が低い早期の肺がんや、呼吸機能が弱い患者さんについては、切除範囲の小さい「区域切除」や「部分切除」などの縮小手術を積極的に行うことで、術後の早期回復を実現しています。一方、がんが太い気管支や血管、周囲の臓器に広がっている進行した肺がんでは、周りの臓器の合併切除を行うこともあります。これらの術式は、肺癌診療ガイドラインや臨床試験などの結果に基づき、患者さんのがんの状態や全身状態、社会生活を考えて決めています。

手術が困難な場合は放射線治療も選択肢

技術的に手術が可能な肺がんであっても、患者さんの体力的な問題がある場合や手術を希望されない場合もあります。四国がんセンターではこのような患者さんに対して、放射線治療も選択肢の一つとして提案しております。

特徴

胸腔鏡手術約3,500例の実績とさらに進んだロボット支援手術の取り組み

胸腔鏡手術

ロボット支援手術

20年前は、開胸手術という約20~30cmの大きな創で、直接臓器を視ながら行うのが一般的でした。胸腔鏡手術は、胸腔鏡を用いてテレビモニターを見ながら、3~4cm程の小さい傷と2または3か所の穴から行う手術です。傷が小さくなったことで、体への負担を軽減することが可能になりました。四国がんセンターでは早期から胸腔鏡手術を導入しており、現在まで約3,500例の実績があります。現在は、さらに精密かつ複雑な操作が可能となったロボット支援手術(da Vinci)が2018年に保険適応となりました。胸腔鏡手術は、主に直線的な棒状の道具を用いて手術を行うため、操作に制限があります。ロボット支援手術は、道具の先端が360度自由に動くことができ、より複雑な操作することが可能です。また、執刀医は3Dモニターでより拡大された術野をみることができます。手振れ防止機能等もあり、執刀医はより丁寧により安全に手術を行うことができます。当院でも2019年に導入し、ロボット支援手術を積極的に行っています。

治験・臨床試験について

四国がんセンターでは積極的に治験を行っています
新薬、新治療法は治験を経て確立していきます。詳しくは『治験とは』のホームページをご覧ください。
ステージが進行した肺がんでは、再発率を下げるために、手術前または手術後に薬物治療を追加で行うことがあります。これを、『補助療法』と呼びます。呼吸器外科で行っている治験は、主にこの『補助療法』の新薬についてです。

外来表

月曜日
山下
火曜日
上野
水曜日
山下
木曜日
重松
金曜日
重松

※診療担当は変更する場合がありますので、事前にご確認ください。

スタッフ紹介

院長
山下 素弘
(やました もとひろ)

専門領域

肺がん・悪性胸膜中皮腫・縦隔腫瘍
胸腔鏡手術・拡大手術

認定資格
  • 日本外科学会 外科専門医 指導医
  • 日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医
  • 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • 臨床研修指導医

院長補佐
外来部長

重松 久之
(しげまつ ひさゆき)

専門領域

肺がん・悪性胸膜中皮腫・縦隔腫瘍
胸腔鏡手術・ロボット手術

認定資格
  • 日本外科学会 外科専門医 指導医
  • 日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医
  • 日本呼吸器外科学会 胸腔鏡安全技術認定医
  • da Vinci Certificate 取得(ロボット手術)
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • 臨床研修指導医

呼吸器外科医長
上野 剛
(うえの つよし)

専門領域

肺がん・悪性胸膜中皮腫・縦隔腫瘍
胸腔鏡手術・ロボット手術

認定資格
  • 日本外科学会 外科専門医 指導医
  • 日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医
  • 日本呼吸器外科学会 胸腔鏡安全技術認定医
  • da Vinci Certificate 取得(ロボット手術)
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

医師
三原 大樹(みはら だいき)

専門領域

肺がん

認定資格

医師
植木 貴史(うえき たかし)

専門領域

肺がん

認定資格

実施中の臨床試験

  • JCOG1708:特発性肺線維症(IPF)合併臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対する肺縮小手術に関するランダム化比較第Ⅲ相試験
  • JCOG1807C:肺尖部胸壁浸潤癌に対する化学放射線療法後の術前後デュルバルマブもしくはデュルバルマブ維持療法を併用した集学的治療に関する単群検証的試験
  • JCOG1906:胸部薄切CT所見に基づく早期肺癌に対する経過観察の単群検証的試験
  • JCOG1909:肺葉切除高リスク臨床病期ⅠA期非小細胞肺癌に対する区域切除と楔状切除のランダム化比較試験
  • JCOG1916:病理学的N2非小細胞肺癌に対する術後放射線治療に関するランダム化比較第Ⅲ相試験
  • JCOG2012:病理病期 Ⅱ-ⅢA 期非小細胞肺癌に対する術後サーベイランスに関するランダム化比較試験
  • JCOG2109:80歳以上の高齢者肺野末梢小細胞肺癌における区域切除vs.楔状切除のランダム化比較試験
  • JCOG2217:胸部薄切CT上すりガラス成分を伴う充実成分優位な非小細胞肺癌(>2-3cm)に対する肺葉切除と区域切除のランダム化比較試験
  • WJOG16622L:非小細胞肺癌手術例における全ゲノム解析を用いたバイオマーカー研究
  • WJOG16923L:臨床病期ⅠA3期の肺野末梢充実型非小細胞肺癌に対する肺葉切除と区域切除のランダム化比較第Ⅲ相試験
  • WJOG17123L:病理病期ⅠA2-ⅡA期EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌における術後補助療法の実態を調査する多施設共同前向き観察研究
  • 家族性肺癌家系における原因遺伝子異常の解明
  • 肺癌登録合同委員会(第8次事業):胸腺上皮性腫瘍の前方視的データベース研究
  • 肺癌登録合同委員会(第12次事業):NCDを用いた本邦における悪性胸膜中皮腫に対する根治術の有用性および予後予測因子の検討
  • NHOネットワーク共同研究:実用性を高めたCOPD患者の身体活動性予測式作成
  • NHOネットワーク共同研究:末梢小型肺癌に対する肺葉切除と区域切除の侵襲を反映する新規指標に関する多機関共同前向き観察研究
  • CMA-0159:切除後の非小細胞肺癌に対するアテゾリズマブ術後補助療法の多機関共同前向き観察研究

他の臨床試験については、当院臨床研究センターホームページの当院で行われている臨床試験をご参照ください。