名誉院長エッセイ

医者と味噌は古いほどよい!?

「是非先生に見てもらいたいです」

外来での診察中に、患者さんやそのご家族のかたよりよくそういわれます。年齢を重ねているぶん、確かに経験はたくさん積んでます。医療だけでなく、医者は人間相手ですから、人間関係のノウハウもです。でも、待ってくださいよ。

こんなことわざがあります

医者と味噌は古いほどよい、って言うことわざを思い出しました。味噌は年月を経たほうが味がよいとのことから、医者も年長者のほうが上手だと言うたとえですよね。でも、味噌は1年ものの白味噌でもおいしいものもたくさんあります。2年ものだっておいしい!ま、医者は確かに1年2年では話しにならないとは思いますが、5、6年もたつと結構しっかりとしてきます。10年もたてば、知識も増えてきて、たいていのことなら任せることができるようになります。私ももう還暦です。新しい知識がなかなか身につきません。特に最近の医療の進歩はめまぐるしくて、かえって若い人のほうが知識が豊富です。たとえば、最近注目されている、手術後に呼吸状態が悪くなった時とか、心臓の状態が悪くなった時とかに使う薬を、若者は実にうまく使いこなすのです!なので、術後の治療は若い世代に任せています―では、私の役はなんでしょうか。かっこよく言わせてもらえば、総指揮官ってところですかね(*^_^*)

そういえばこんなことわざも…

医者にかかるのがだーい好きな人がいると思えば、だーい嫌いな人もいますよね。だーい嫌いな人たちがつくったことわざのほうが粋なものが多いようですね。腹八分目は医者いらず、はその最たるものでしょうねまた、一日一個のリンゴで医者いらず、はその海外版ですね。英語では、An apple a day keeps the doctor awayです。トマトが赤くなると医者が青くなるもそういった意味ですね。リンゴのほうは、もともとは、Eat an apple on going to bed,and you’ll keep the doctor from earning his breadが大元だと言われています。直訳すると、「寝る前にリンゴを一個食べると、医者がパンを稼ぐのを妨げられますよ」です。いやなやつですねぇ…でも、それだけ昔の医者は裕福だったのでしょうか。うらやましいなあ。。。

こんなのもあります…

ここまでいくとどうでしょうか。ドイツの格言です。ビール1本と塩漬けキャベツは医者から金貨を奪い取る、なんてのはビール会社の策略でしょうかね。日本では、医者を殺すに刃物はいらぬ。朝昼晩に梅を食え、というのがあります。なんと、医者が目の敵のようです。それはともかく、適量ならいいのでしょうが、食べ過ぎ、飲み過ぎはいけませんよね。

最後に

医者と坊主はお年寄りがよい、ってのもありますよ。これは、先のお味噌と同じ意味合いですね。怖いところでは、新しい医者と新しい墓へは行くな。おお、怖っ(-_-;)。怖いついでに、医者の薬もさじ加減。

栗田 啓