食道がん

食道がんの動向

男性での診断割合が増加傾向

食道がんと診断される患者数は、男性7位、女性14位(2018年部位別がん罹患数より)です。年齢が高くなるにつれて、特に男性でがんと診断される割合が高くなる傾向です。

食道がんの診断

(1) がんの存在、進行度(ステージ)を診断

1. 上部消化管内視鏡検査
…通常観察、狭帯域光観察(NBI:Narrow Band Imaging)、拡大観察、色素観察での判定や、異常部位からの組織の採取、診断が可能です。検診などでも広く行われています。
2. 超音波内視鏡検査
…内視鏡と超音波装置を一体として、食道の内側から、がんの深さ、食道の外の臓器とがんとの位置関係を調べます。
3. 消化管造影検査
…バリウムを服用し、レントゲン撮影像から異常があるかどうかを判定する検査です。検診などでも広く行われています。
4. CT
…がんがどの部位にあるのか、リンパ節転移や、肝臓、肺など他の臓器への転移がないかどうかを調べます。
5. PET-CT
…通常のCT検査で判断がつかない小さな転移を見つけるのに有用です。主に治療前の病期(ステージ)を決める場合や、がんの治療後に転移再発がないか調べる目的で、行っています。

(2) 組織を採取してがん細胞を診断

食道がんは、主に「扁平上皮がん」「腺がん」に分類されます。
扁平上皮がん…日本では約90%以上を占めます。飲酒や喫煙が主な原因となります。
腺がん…日本では約10%以下と少ないです。欧米で多く、肥満、胃食道逆流症が原因となります。
上部消化管内視鏡検査で異常が認められる部位から組織を採取します。

食道がんの病期(ステージ)

食道がんの病期(ステージ)は、がんのひろがり方、リンパ節転移、他の臓器への転移によりⅠ~Ⅳ期に分かれ、それぞれ治療方針が異なります。

ここでは「食道癌取り扱い規約」の病期(ステージ)を紹介します。

壁深達度(がんの深さ)
T0 がんを認めない
T1a がんが粘膜内にとどまる病変
T1b がんが粘膜下層にとどまる病変
T2 がんが固有筋層にとどまる病変
T3 がんが食道外膜に浸潤している病変
T4 がんが食道周囲臓器に浸潤している病変
 T4a:胸膜、心膜、横隔膜、肺、胸管、奇静脈、神経
 T4b:大動脈(大血管)、気管、気管支、肺静脈、肺動脈、椎体

リンパ節転移の程度
N0 リンパ節転移を認めない
N1 第1群リンパ節のみに転移を認める
N2 第2群リンパ節のみに転移を認める
N3 第3群リンパ節のみに転移を認める
N4 第3群リンパ節より遠位のリンパ節(第4群)に転移を認める

(リンパ節転移は、食道がんの発生場所で分類されています。転移しやすいリンパ節からしにくいリンパ節まで、第1群~第4群まで分類します。)

遠隔転移
M0 遠隔転移を認めない
M1 遠隔転移を認める

進行度 Stage

食道がんの治療

病期(ステージ)により治療方針が異なります

病期(ステージ)により、『内視鏡治療』『外科手術』『化学放射線療法(抗がん剤治療と放射線治療を同時に行う方法)』『化学療法(抗がん剤治療)』と治療方針が異なります。四国がんセンターでは、『消化器外科』、『消化器内科』、『放射線治療科』の3科が連携して治療しています。
「食道癌診療ガイドライン」に基づいた、食道がんの治療の概略を紹介します。

食道がんの内視鏡治療

0期食道がんの場合、上部消化管内視鏡を用いて、食道の内側よりがんを切除します。侵襲が少なく、入院期間は通常1週間~10日程度です。切除した組織は、顕微鏡の検査で詳しく調べ、がんが深くひろがっている場合、残っている可能性が高い場合、転移再発をきたすことが予想される場合は、追加の外科手術もしくは化学放射線療法を行うことがあります。

食道がんの外科手術

Ⅰ~Ⅲ期の食道癌の場合、標準治療は「外科手術」になります。当センターでは、従来の開胸手術に加え、胸腔鏡手術も実施しています。
化学放射線療法でがんが残った場合や、再発した場合は、根治を目指した「サルベージ手術」を行っています。

【当センター食道外科の特徴】

  1. 1.愛媛県で唯一の食道外科認定施設です。https://www.esophagus.jp/public/list/certified_facilities.html
  2. 2.愛媛県で有数の食道がん手術を行っている病院です(2019年えひめ医療情報ネットより)。
  3. 3.カメラを使った傷の小さな手術(胸腔鏡)で食道がん手術を行っています。
  4. 4.化学放射線治療後に再発した患者さんに対する食道がん手術(サルベージ手術)を行っています。
  5. 5.術後合併症が少なく、手術から平均3週間で退院できます。

【胸腔鏡手術とは】

  1. 1.大きく胸を切って手術する方法(開胸手術)と違って、胸腔鏡手術は胸に1cm程度の小さな傷を5個ぐらい開けて、カメラで観察しながら長いピンセットやメスを入れて患部を切除します(図1)。
  2. 2.傷の痛みが少なく、肺炎などの合併症を減らして術後の回復も早いと言われています。
  3. 3.四国がんセンターでは過去9年で132人の患者さんが食道癌の外科手術を受けまし たが、その中で胸腔鏡手術を受けた患者さんは80人と6割を占めています(表1)。

【サルベージ手術とは】

  1. 1.放射線と抗癌剤を使って食道癌を根治させる方法(化学放射線療法)があります。
  2. 2.化学放射線治療後に癌が再発した場合に外科手術することをサルベージ手術といいます。
  3. 3.サルベージ手術は通常の外科手術と違って難しい手術なのですが、四国がんセンターでは過去9年で18人の患者さんがサルベージ手術を受けて病変を摘出しました(表1)。

(図1)

(表1)

2012年
2013年
2014年
2015年
2016年
2017年
2018年
2019年
2020年
合計
開胸手術
14人
7人
2人
6人
5人
6人
6人
3人
3人
52人
胸腔鏡手術
5人
13人
11人
9人
13人
10人
4人
5人
10人
80人
サルベージ手術*
6人
3人
1人
3人
2人
0人
2人
0人
1人
18人

*サルベージ手術数は開胸手術数と胸腔鏡手術数に一部含まれます。

食道がんの化学放射線療法

Ⅰ〜Ⅲ期の食道がんの場合、あくまで標準治療は「外科手術」ですが、特に持病がある方、高齢の方、手術に耐える体力が心配な方は、長時間の手術による侵襲の大きさや合併症が気がかりになります。化学放射線療法は、手術をせずに、臓器を温存しつつ手術と同じ程度完治できるとされています。当センターでは外科から外科手術の説明を、内科からは化学放射線療法の説明を行い、患者さんに治療方法を選択していただきます。
がんが再発した場合も、外科手術(サルベージ手術)ではなく化学放射線療法を行うことがあります。
Ⅳ期の食道がんで、放射線治療でがんの範囲を全て照射できる場合(ⅣA期)には化学放射線療法で完治を目指します。がんの範囲が広く、完治を目指す治療が難しい場合でも、がんによって食事の通りが悪い場合などは、症状緩和目的に、化学放射線療法を行います。
入院期間は、約2ヶ月間です。

食道がんの化学療法

他の臓器にがんが広がっていて、完治を目指す治療が難しい場合(ⅣB期)は、がんの進行を抑え、縮小を目指した化学療法(全身のがん細胞に働く抗がん剤の治療)を行います。
よりよい治療の開発を目指して、現在数多くの臨床試験・治験が行われています。当センターにおいても、国内や海外で実施している臨床試験・治験に積極的に参加しています。