副腎腫瘍

副腎腫瘍について

副腎は腎の上方に位置する3~4cm程度の臓器で、血圧などを調節する非常に重要なホルモンを分泌しています。副腎は皮質と髄質という部分に分かれています。
副腎は生命の維持に必要なホルモンを分泌しています。この副腎に腫瘍ができることがあります。良性腫瘍のことが多いのですが、悪性腫瘍(がん)のこともあります。良性腫瘍でも、ホルモンを過剰産生する場合には手術が必要になります。
副腎腫瘍はホルモンを産生するものとしないものに分類され、それぞれ良性と悪性があり、以下のように分類されます。

副腎皮質
良性
機能性副腎皮質腺腫(ホルモン産生あり)
・アルドステロン症
・クッシング症候群
・プレクリニカルクッシング症候群
・性ステロイド過剰産生
非機能性副腎皮質腺腫(ホルモン産生なし)
悪性
副腎がん(副腎皮質癌)
副腎髄質
良性
褐色細胞腫
悪性
悪性褐色細胞腫

アルドステロン症

アルドステロンを過剰分泌する腫瘍です。アルドステロンはそのホルモン活性から、低カリウム血症を認める高血圧患者の精査でほとんど発見されます。

クッシング症候群

コルチゾールを過剰分泌する腫瘍です。コルチゾールにより引き起こされる症状は多様です。満月様顔貌や高血圧、中心性肥満が80%以上で見られます。また、水牛様脂肪沈着や月経異常が約60%に、伸展性皮膚線条や浮腫、糖尿病、骨粗鬆症、にきび、多毛などが約50%に見られます。さらに、情緒不安定、不眠症、抑うつなどの精神症状が現れることもあり注意が必要です。

プレクリニカルクッシング症候群

クッシング症候群の特徴を伴わない、コルチゾール過剰分泌腫瘍です。ただし、高血圧や肥満、耐糖能異常など非特異的な臨床症状はよく見られます。

性ステロイド過剰産生

アンドロゲンを過剰分泌する腫瘍です。アンドロゲンの一部がテストステロンとなり、男性化をきたします。純粋にアンドロゲンのみを産生する副腎腫瘍はまれで、多くの場合はコルチゾールの過剰分泌を合併しているためクッシング症候群として取り扱われます。

褐色細胞腫

カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)を過剰分泌する腫瘍です。カテコールアミンは強い昇圧作用(血圧を上げる作用)を持つため大部分で高血圧を合併します。高血圧も持続性のものと発作性のものがあります。高血圧以外に、動悸、頭痛、発汗、胸痛、体重減少、振戦など多彩な症状を認めます。また、高頻度(25~75%)に糖尿病を合併しています。しかし、無症候性が約30%存在し、人間ドックなどで偶然発見されます。全体の約10%に、悪性例、家族内発生例、副腎外発生例、両側副腎発生例があります。

内分泌非活性腫瘍

ホルモンを産生しない副腎腫瘍です。内分泌非活性皮質腺腫や骨髄脂肪腫、神経節腫などが含まれます。ホルモン産生がありませんので特徴的な症状はなく、ほとんどが人間ドックや他疾患精査中に後尾善発見されます。

副腎がん

特徴的な症状はありませんが、がんからホルモンが分泌されているとそのホルモンに応じた症状が出現します。

診断

画像検査で副腎腫瘍が認められればホルモン検査を行い、ホルモンの過剰分泌がないかどうか検査します。画像検査で悪性が疑われる場合には遠隔転移がないかどうかの検査も行います。

予後

副腎がんの予後は非常に悪いとされています。一般的には臨床病期Ⅰ~Ⅱ期では5年生存率45~60%、臨床病期Ⅲ~Ⅳ期では10~25%と報告されています。Ⅳ期で手術ができなければ予後はさらに悪くなります。

治療

手術療法

良性の副腎腫瘍では手術が行われます。よほど大きな腫瘍でない限り、ほとんどが腹腔鏡手術で行われています。
副腎がんも小さなものであれば腹腔鏡で摘出します。臨床病期Ⅲ期までは手術の適応ですので、腹腔鏡手術が困難であれば開腹手術で摘出します。Ⅳ期でも手術可能と判断されれば、他に有効な治療法がないため手術を考慮します。

化学療法(抗がん剤治療)

副腎がんで手術が不可能と判断された場合、化学療法を行います。現在副腎がんに有効性が認められている化学療法はEDP(エトポシド+ドキソルビシン+シスプラチン)療法のみです。奏効率は23.2%、病勢のコントロールは58.3%と報告されています。
悪性褐色細胞腫で手術不能あるいは再発症例の場合、CVD(シクロホスファミド+ビンクリスチン+ダカルバジン)療法が施行されます。また、ヨウ素131-MIBGを用いたアイソトープ治療(内照射療法)も有効な治療法ですが、国内では限られた施設でしか行われていません。

治療法の選択に関して

内分泌活性のある良性副腎腫瘍は手術が第一選択です。手術により症状の改善が期待できます。それまで過剰分泌していた腫瘍を手術で摘出しますので、一時的にホルモンの補充が必要になることもあります。
内分泌非活性の良性副腎腫瘍では特に手術する必要性はなく、経過観察がなされます。経過中増大してきた場合は、良性ではなく悪性の可能性がありますので、手術を考慮します。
副腎がんなどの悪性の場合も、まず摘除を考えます。摘除不能の場合は化学療法を行うことになりますが、化学療法の有効性は低いので、治療についてはよく相談してから決めてください。症状がなければ緩和治療のみ行うという選択肢もあります。

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