診断について

膀胱がんについて

①膀胱の場所(解剖、組織について)

膀胱や尿管、腎盂の内腔は尿路上皮という細胞で覆われています。この尿路上皮とよばれる細胞から発生したがんが尿路上皮がん(腎盂がん、尿管がん、膀胱がん)です。

②疫学

2014年の罹患率(人口10万人あたりの発生率)は男性で24.5人、女性で7.6人です。それほど多いがんではありませんが、年々少し増加の傾向にあります。男女比では女性より男性に多く、女性の約3倍多いといわれています。多くは50歳以上に発生しますが、若年者にもときにみられます。

③原因

原因の明らかな膀胱がんは少なく、ほとんどの膀胱がんは自然発生です。その機序についてはまだ十分にはわかっていませんが、最近遺伝子レベルでの変化が明らかにされつつあります。危険因子として、喫煙があげられ、喫煙者は非喫煙者に比べて4倍程度発生率が高いといわれています。また芳香族アミンなどの染料と膀胱がんとの関係も深く、このような化学物質を扱う職業の人に好発することが有ります。

膀胱がんの診断について

1.症状

初期症状として多くみられるのは血尿です。肉眼で確認できる血尿(肉眼的血尿)のこともあれば、顕微鏡ではじめて確認できる程度の血尿(顕微鏡的血尿)のこともあります。血尿は痛みなどを伴わない場合が多く、初期では突然出現し、自然に消失します。腫瘍が進行してくると、頻尿、排尿痛、残尿感といったもののほか、尿路感染、尿管口の閉塞による腎機能の低下なども起こります。

2.検査

膀胱がんの発見のための検査、及び診断後、がんの広がり具合をみるための検査があります。これらの検査により膀胱がんがどの程度進行しているかを確認し、治療方針の決定をします。

A.膀胱内視鏡検査(ファイバースコープ)

膀胱の中を内視鏡で観察します。膀胱がんの診断には最も大切な検査です。尿の出口(尿道口)から柔らかく細い内視鏡(軟性膀胱鏡)を挿入します。通常検査に要する時間は数分です。

B.レントゲン検査

尿路(腎盂、尿管、膀胱)を明瞭に映すために造影剤を点滴しながら写真を撮ります。膀胱内のがんの大きさや腎盂、尿管のはれ(水腎症といいます)がわかります。

C.CT・MRI検査

原発巣の深達度やリンパ節転移の有無の診断に有用です。

D.組織検査について

内視鏡で確認された腫瘍の一部を採取し、顕微鏡で診断します。外来検査時に生検することも可能ですが、多くの場合、診断と治療をかねて経尿道的膀胱腫瘍切除術がなされます。この手術により初めて正確な臨床病期も診断されます。

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)について

まず半身麻酔(腰椎麻酔)をかけます。右図のようにベッドに横になり、体をできる限り丸くして下さい。
体を丸くすることで背骨の間の隙間が広がり麻酔針が脊髄腔まで到達します。体が伸びたままだと、なかなか麻酔ができないのでご協力下さい。仰向けになり、麻酔が効くまで待ちます。麻酔は10 分程度で効きますので、麻酔の範囲を確認後、手術の体勢をとります(足を開いた状態)。

右図のような膀胱ファイバーを挿入後、膀胱内を確認、腫瘍を切除していきます。内視鏡的にすべて切除すれば終了です。セカンドTUR やBCG膀胱内注入後の効果判定の場合には、前回の手術痕がわかりますのでそこを中心に十分切除します。膀胱内確認時に異常があれば生検を追加することがあります。
手術が終了すると膀胱内にバルンカテーテルを挿入し、一晩生理食塩水で洗浄します。
血尿でバルンカテーテルが閉塞しないようにするためです。通常バルンカテーテルは手術後2日目に抜去しますが、憩室内腫瘍や手術中に異常があった場合には抜去日が延長します(約1週間)。