診断について

解剖と疫学

①膀胱の場所(解剖、組織について)

膀胱や尿管、腎盂の内腔は尿路上皮という細胞で覆われています。この尿路上皮とよばれる細胞から発生したがんが尿路上皮がん(腎盂がん、尿管がん、膀胱がん)です。

②疫学

2020年の罹患率(人口10万人あたりの発生率)は男性で28.4人、女性で8.9人です。それほど多いがんではありませんが、年々少し増加の傾向にあります。男女比では女性より男性に多く、女性の約3倍多いといわれています。多くは50歳以上に発生しますが、若年者にもときにみられます。

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がん種別統計情報:膀胱(外部サイト)

③原因

原因の明らかな膀胱がんは少なく、ほとんどの膀胱がんは自然発生です。その機序についてはまだ十分にはわかっていませんが、最近遺伝子レベルでの変化が明らかにされつつあります。危険因子として、喫煙があげられ、喫煙者は非喫煙者に比べて4倍程度発生率が高いといわれています。また芳香族アミンなどの染料と膀胱がんとの関係も深く、このような化学物質を扱う職業の人に好発することが有ります。

膀胱がんの診断について

1.症状

初期症状として多くみられるのは血尿です。肉眼で確認できる血尿(肉眼的血尿)のこともあれば、顕微鏡ではじめて確認できる程度の血尿(顕微鏡的血尿)のこともあります。血尿は痛みなどを伴わない場合が多く、初期では突然出現し、自然に消失します。腫瘍が進行してくると、頻尿、排尿痛、残尿感といったもののほか、尿路感染、尿管口の閉塞による腎機能の低下なども起こります。

2.検査

膀胱がんの発見のための検査、及び診断後、がんの広がり具合をみるための検査があります。これらの検査により膀胱がんがどの程度進行しているかを確認し、治療方針の決定をします。

A.膀胱内視鏡検査(ファイバースコープ)

膀胱の中を内視鏡で観察します。膀胱がんの診断には最も大切な検査です。尿の出口(尿道口)から柔らかく細い内視鏡(軟性膀胱鏡)を挿入します。通常検査に要する時間は数分です。

B.レントゲン検査

尿路(腎盂、尿管、膀胱)を明瞭に映すために造影剤を点滴しながら写真を撮ります。膀胱内のがんの大きさや腎盂、尿管のはれ(水腎症といいます)がわかります。

C.CT・MRI検査

原発巣の深達度やリンパ節転移の有無の診断に有用です。

D.組織検査について

内視鏡で確認された腫瘍の一部を採取し、顕微鏡で診断します。外来検査時に生検することも可能ですが、多くの場合、診断と治療をかねて経尿道的膀胱腫瘍切除術がなされます。この手術により初めて正確な臨床病期も診断されます。

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)について

まず麻酔(全身あるいは腰椎麻酔)をかけ、手術の体勢をとります(足を開いた状態)。右図のような膀胱ファイバーを挿入後、膀胱内を確認、腫瘍を切除していきます。内視鏡的にすべて切除すれば終了です。膀胱内確認時に異常があれば生検を追加することがあります。手術が終了すると膀胱内にバルンカテーテルを挿入し、一晩生理食塩水で洗浄します。血尿でバルンカテーテルが閉塞しないようにするためです。通常バルンカテーテルは手術後2日目に抜去します。

臨床病期について

以上の検査結果を組み合わせ、病期(ステージ:がんの進行度)が決定されます。病期分類にはTNM分類がよく使用されます。T:原発腫瘍(がんの状態)、N:リンパ節、M:転移を意味します。TNM分類は時々改訂され新しくなりますが、現在最も新しい分類は2017年の改定版です。以下に2017年TNM分類を示します。

T分類:局所(膀胱内)のがんの進行度

Ta:乳頭状非浸潤がん
Tis:上皮内がん(CIS)
T1:粘膜上皮下結合織に浸潤するがん
T2:筋層に浸潤するがん
T2a:浅筋層に浸潤するがん
T2b:深筋層に浸潤するがん
T3:膀胱周囲組織に浸潤するがん
T3a:顕微鏡的
T3b:肉眼的(膀胱外の腫瘤)
T4:次のいずれかに浸潤する腫瘍
T4a:前立腺間質、精嚢、子宮、膣
T4b:骨盤壁、腹壁

N分類:リンパ節転移の有無とその程度

N0:所属リンパ節転移なし
N1:小骨盤腔内の1個のリンパ節への転移
N2:小骨盤腔内の多発リンパ節転移
N3:総腸骨動脈リンパ節転移

M分類:他の臓器への転移の有無

M0:転移なし
M1:転移あり

ステージ分類

0期:TaあるいはTisでリンパ節転移および遠隔転移なし
Ⅰ期:T1でリンパ節転移および遠隔転移なし
Ⅱ期:T2でリンパ節転移および遠隔転移なし
Ⅲ期:T3-T4aでリンパ節転移および遠隔転移なし、あるいはT1-T4aでリンパ節転移ありかつ遠隔転移なし
Ⅳ期:T4でリンパ節転移ありかつ遠隔転移なし、あるいはT・Nに関係なく遠隔転移あり

ステージ0とⅠ期を筋層非浸潤がん(表在がん)、ステージⅡとⅢ期を筋層浸潤がん、ステージⅣ期は転移がんと呼ばれます。

(2025年1月更新)