治療について

筋層非浸潤がん

Tis(上皮内がん)

上皮内がんは膀胱粘膜内のがんですが、隆起性病変を作らないためTaやT1の筋層非浸潤がんと違って内視鏡的に完全に切除するのは不可能です。以前は膀胱を全て摘出する(全摘)必要がありましたが、現在はBCGを膀胱内に注入する治療が第一選択です。
BCGは弱毒化した(抗原性を失うことなく病原性を少なくした)結核菌で結核予防のための抗結核ワクチンです。これが上皮内がんに有効であり、この治療が始まってからは、膀胱全摘をはじめからする必要はなくなりました。
上皮内がんに対するBCG膀胱内注入療法により、80~90%でがんが消失します。実際の治療法は、尿道口(尿の出口)から細くて柔らかいカテーテルを膀胱内まで進め、カテーテルからBCG薬液を膀胱内に注入します。2時間程度、排尿をがまんしていただき、その後排尿してもらいます。膀胱内注入療法の多くは外来通院でできる、安全性の高い治療法です。しかしながら30~50%に膀胱刺激症状(尿が近い、尿が我慢できない、排尿時に痛みがある)が出る場合があります。また、血尿(15~30%)、発熱(20%)、膀胱容量の低下(0.1~1.0%)などの症状がでることもあり、注意が必要です。重篤な合併症確認のため、初回のみ入院して行います。

Ta・低悪性度およびT1・低悪性度

今回の手術で治療は終了です。ただし、膀胱がんは非常に再発しやすく、50%以上に再発が認められます。そのため、定期受診は必須です。手術後2年間は3ヶ月毎に膀胱ファイバーで再発のチェックを行います。3年以降は4-6ヶ月毎に、5年以降は1年毎になります。

Ta・高悪性度およびT1・高悪性度

このタイプの膀胱がんは、一見内視鏡で全て切除したように見えても、高頻度に残存がんがあることがわかっています。そのため、手術から1ヶ月後にもう一度経尿道的切除術(セカンドTUR)をしなければいけません。そのときの手術結果で追加治療が必要な場合があります。以前にBCG膀胱内注入を行っている人で、T1・高悪性度がんが再発した場合には膀胱全摘を考えなければ行けません。この場合、セカンドTURは不要です。

セカンドTURで残存がんがない場合

Ta・高悪性度:セカンドTURのみで治療は終了です。今後は再発チェックのため外来受診となります。
T1・高悪性度:BCG膀胱内注入をする群としない群での臨床試験を行って折り、結果が出るのを待っています。それまでの間はBCG膀胱内注入を行います。

セカンドTURで残存がんがある場合

Taの残存がん:厳重に経過観察とします。
T1の残存がん:BCG膀胱内注入をします。またBCG膀胱内注入終了約1ヶ月後に効果判定のためTURをします。
T2以上の残存がん:浸潤がんの治療を行います。(標準は膀胱全摘除術)

筋層浸潤がん

浸潤性膀胱がんで転移がない場合の標準治療は膀胱全摘除術になります。また、一部の筋層非浸潤がん(BCG治療抵抗性やTURでコントロールできないなど)も膀胱全摘除術が標準治療です。

男性の場合は膀胱・前立腺を摘除します。回腸導管の場合は通常尿道も取ります。
女性の場合は膀胱・尿道・子宮(卵巣)・膣の一部を摘除します。
同時に骨盤リンパ節も摘出し、治療とともに微小なリンパ節転移がないか診断もします。尿を貯める膀胱を摘出しますので、尿路変向術(尿の出口を作成)が必要になります。術後、2~3週後に摘出した標本の病理診断(顕微鏡検査)が出ます。その結果により追加治療が必要な場合もあります。
転移がない場合の浸潤性膀胱がんは全て膀胱全摘除術の適応になるのですが、T4がんでは手術での完全切除が困難な場合があります。その場合には手術前に抗がん剤による治療(術前化学療法)を行い、がんを小さくしてから手術に臨みます。術前化学療法に関しては施行したほうが生存率が良かったという報告がありますが、まだ一般的には認められておらず、当科では先ほど述べたような切除が困難な症例のみに行っています。
手術で摘出すれば治療は終わりではありません。浸潤がんの一番の問題は再発、転移です。このため定期受診が非常に重要です。

尿路変向

尿路変向術はいくつか存在し、主に禁制型尿路変向(尿をためることができる)と失禁型尿路変向(尿をためることができない)に分かれます。禁制型尿路変向には自排尿型(新膀胱)と導尿型があります。失禁型尿路変向では身体に集尿袋を貼り付けることが必要となります。尿路変向にはそれぞれ利点、欠点があり、また体の状況やがんの進行度によりすべての方法が選択肢になるとは限りません。
下に尿路変向の模式図を示しています。

回腸導管

尿管皮膚ろう

右の写真は尿管カテーテル(チューブ)を挿入しているところです。尿管皮膚ろうの場合には、このようにカテーテルを挿入するものと、ステントというもう少し細いチューブを挿入し、回腸導管のようにパウチを皮膚に貼って採尿するタイプがあります。カテーテルの場合は、カテーテル先端に接続する採尿袋があり、下肢に取り付けて使用します。

新膀胱(自排尿型)

尿道カテーテルの抜去は手術後3週目です。その後、排尿練習が開始になります。新膀胱には感覚がありませんので今までの排尿とは違いますが、徐々になれてきます。
立位より座位での排尿が楽な方がいますので自分にあった排尿を練習しましょう。

 
新膀胱(自排尿型)
回腸導管
尿管皮膚ろう
利点
自分の尿道から排尿できる。集尿袋が不要である。
ほぼすべての人に適応。
腸を切らない。手術時間が短い。
手術時間が短い。
欠点
尿道摘除の必要な人は適応外。女性も適応は慎重。夜間の尿失禁が問題(50%に起こるとされている)。
集尿袋を一生つけなければならない。ただし交換は3日に一度自分で施行。
集尿袋をつけ、尿管チューブを挿入し、月に一度交換が必要(病院で)。
入院期間
4-5週間
3-4週間
2-3週間

禁制型尿路変向の中で導尿型尿路変向は、腸でおなかの中に袋を作成し、回腸導管のようなストーマから袋に尿が貯まると自分で導尿する、というものです。集尿袋もいらず、見た目には小さなストーマ(カットバンで隠れます)があるだけでが新膀胱の普及で近年はあまり行われていません。

補足1)ロボット支援手術について

膀胱がんに対する膀胱全摘除術は開腹手術と腹腔鏡下手術がこれまでなされてきました。 腹腔鏡下膀胱全摘除術は2012年4月に保険収載された術式ですが、当院ではこれまで、摘 除後の尿路変向(新膀胱)やリンパ郭清の点から腹腔鏡手術は行わず、開腹手術を行って きました。2018年4月からは膀胱全摘除術もロボット支援手術が保険収載され、施行でき るようになりました。当科でのロボット支援手術は2014年11月に導入され、器械および 術式にも習熟し、合併症もなく安全に施行できています。

 
ロボット支援手術/腹腔鏡手術
開腹手術
長所
低侵襲である 鮮明な画像を見ながら手術が出来る(ロボット支援手術では3D画面)
拡大視野で執刀医以外のスタッフも同じ画像を共有できる
気腹圧で出血が抑えられる
ロボット支援手術の鉗子は自由度が高くコンピュータ制御されている(手ぶれ防止など)
これまでの経験例数が多い
特殊な機器は不要
手の自由度が高い(腹腔鏡に比べて)
短所
頭低位が必要
手術時間が長くなる場合がある
手術手技に修練が必要
手術器具の操作に制限を受けることがある
(特に腹腔鏡)
腹腔内播種やポート部再発の報告あり
傷が大きい(術後疼痛あり)
術後の回復がおそい
視野が悪い(特に助手)
出血量が多い(輸血が必要)

ロボット支援手術であれば、腹腔鏡のデメリットである鉗子操作の制限がなくなり、自由 度の高い鉗子で手術が行えるため開腹手術と同等以上の手術が可能になりました。

手術方法

①頭低位(頭を15から25度下げた状態)で手術を行います。

②5-12mmの穴(ポート)を5-6箇所あけ手術を開始します。ロボットが4個、助手が1-2個のポートを使用します。

③膀胱を、頭側を覆っている腹膜ごと切除します。男性では前立腺、女性では子宮・卵巣・膣を同時に摘出します。膀胱周囲や骨盤底部は血流量が多く、時に出血量が増加することがあるため、丁寧にはがしていきます。

④膀胱に繋がる尿管と尿道を切断し、癌が及んでいないか迅速診断で調べます。

⑤尿道摘出が必要な方には会陰(陰嚢の裏)より皮膚切開を追加して尿道を同時に摘出します。膣周辺や尿道周辺も出血しやすい操作となります。

⑥骨盤内のリンパ節を摘出します。膀胱癌はリンパ節に転移しやすく、手術前の診断では分からなかったリンパ節転移が見つかることがあります。

⑦上記操作にて膀胱は体外へ摘出されます。ここまでで4-6時間要します。

⑧骨盤の摘出部はにじみでるような出血がみられることがあり、それらを十分に止血します。

⑨尿管に癌が及んでいた場合には、癌が存在しない部位までさらに尿管を腎臓側に切り上げます。また尿道に癌が及んでいた場合には、尿道摘出を必要とすることがあります。このため術前に予定していた尿路変更が施行できず別の方法を選択したり、腎臓まで摘出せざるを得なくなる場合もあります。これらを全て確認した上で、尿路変更術を行います。

⑩尿路変更術について説明します。
 1)回腸導管法について:この方法は尿路変更術として古くから用いられた方法であり、近年まで最も選ばれることの多かった方法です。回腸という小腸の一部を15cmほど切除し、その端に尿管を縫いつけ、もう片方の端を臍の右に出します。そこに集尿袋を装着します。手術時間も短く、簡便な方法です。手術時間は2時間くらいです。

 2)新膀胱造設について:この方法は最近、用いられることが多くなりました。回腸導管や尿管皮膚瘻と違い体に集尿袋を装着する必要がなく、見た目には手術時の傷しかわかりません。回腸を60cmほど切除し袋状に縫い、尿道とつなげます。他の方法よりも手術時間が長く、切除する腸も長いのが欠点です。また自分の膀胱とは多くの点で異なります。尿意がなく腹部の張りで尿の貯留がわかります。また夜間は自然に失禁してしまうことが多く、一度排尿のために起きなければなりません。また女性に対する適応は慎重です。残尿が多い場合は自己導尿が必要になります。手術時間は3-4時間くらいです。(下記の図は新膀胱のイメージです)
 3)尿管皮膚瘻について:この方法は腸を使わずに尿管をそのまま皮膚に出し、そこに集尿袋を貼るという単純な方法です。腸を用いないため手術時間も短く、また術後の合併症も少なくすむという利点があります。しかし尿管がよく狭窄をきたし順調に尿が流れなくなることが多く、尿管にチューブを挿入し、それを病院で定期的に交換が必要になることがあります。尿が直接皮膚にかかるため皮膚のただれもあります。腎機能も長期的にみれば低下しやすいとされており、何らかの理由で腸が使えない方以外は通常、第一選択にはなりません。

⑪尿路変更術終了後、リンパ液や出血を体外に排出するためのチューブ(ドレーン)を置き、閉創して手術終了です。

ロボット支援手術の特徴は、自由度の高い手術用鉗子や3次元画像により,繊細で安全な手術操作が可能であることです。このことにより従来の腹腔鏡で制限されていた欠点を補い安全で質の高い手術が可能になりました。

合併症について

ロボット支援手術と開腹手術を比較した場合、その合併症の比率にはほとんど差がないとされます。
一般的な合併症として次のようなことがあげられます。ただしこのような合併症が起こらないよう手術時および術後には十分な注意を払います

1.出血
膀胱の手術は出血が多く、可能であれば自己血を用意しますが輸血を要することもあります。
2.細菌感染(4-8%)
発熱、創部感染、腎盂炎がみられることがあります、重症のものでは肺炎、腹膜炎、敗血症があります。縫合した傷が開くと再縫合が必要なこともあります。
3.肺塞栓(3-5%)・深部静脈血栓(7-10%)・空気塞栓(頻度不明、非常に低い)
術中や術後は血栓(血のかたまり)ができやすくなります(深部静脈血栓)。この血栓が血流に乗り肺で詰まってしまうのが肺塞栓です。大きな血栓では呼吸ができなくなり、死に直結します。このため、血栓予防として足に血流をよくする機械を装着します。ただし100%の血栓予防効果はありません。早期離床が大事です。腹腔鏡手術では気腹(二酸化炭素を入れて膨らませる)するため、血栓ができやすくなるのではと心配されていましたが、統計上差はありません。また、腹腔鏡手術の場合、手術中に使用する二酸化炭素が大量に血管内に吸収されたときに空気塞栓がおこる可能性がありますが、現在報告はほとんどありません。
4.尿失禁(新膀胱の方)
術直後は必発です。骨盤底筋運動で1年後には90%以上の人が回復します。しかし、失禁が持続する人もいます。ペニスクレンメという装具を使用する事もあります。また夜間の失禁は将来的に続き、予防のためにトイレのために夜中起きなければなりません。
5.排尿障害、残尿、尿閉(新膀胱の方 特に女性)
新膀胱は生来の膀胱と異なり、腹圧で排尿することになります。腹圧の掛け方は人それぞれ異なりますので、御自身の方法を取得してもらいます。(座った姿勢のほうが排尿しやすい方もいます。)排尿困難であれば自己導尿(自分で管を用いて尿を取る)の併用が必要になることもあります。
6.腸閉塞(16-33%)
この手術の大きな合併症では最も頻度の高いものです。絶食だけで治癒するものから、鼻から腸へのチューブ挿入の必要なもの、再手術の必要なものと重症度も様々です。ときに人工肛門が一時的に必要となることがあります。
7.勃起障害(インポテンス)、性交不能、射精不能
手術後は不能となります。
8.リンパ漏、リンパ嚢腫(1-3%)
ドレーンからのリンパ液の排出が多いときは、ドレーンを抜くのに時間がかかることがあります(1ヶ月以上のことも)。ドレーン抜去後にリンパ液が再貯留することがあります。発熱や痛みな自然吸収しますので放置できますが、症状がある場合には処置が必要になります。
9.直腸損傷(1%以下)
膀胱・前立腺と直腸との癒着が強かったり、癌の浸潤があると起こることがあります。稀ですが一時的に人工肛門が必要なこともあります。
10.コンパートメント症候群(頻度不明、非常に低い)
複数の筋肉がある部位(骨盤の手術では下肢)ではいくつかの筋ごとに区画に分かれています。この区画のことをコンパートメントといいます。骨折や打撲などの外傷が原因で筋肉組織などの腫脹がおこり、その区画内圧が上昇すると、その中にある筋肉、血管、神経などが圧迫されて循環不全を引き起こし、壊死や神経麻痺をおこすことがあります。このことをコンパートメント症候群といいます。強い疼痛が特徴で、他に腫脹、知覚障害などがみられます。処置が遅れると筋肉壊死や神経麻痺をおこすため、重症な場合には区画内圧減少のため筋膜の切開(減張切開)が必要になります。頭低位の手術ではコンパートメント症候群の報告がありますが頻度はごく稀です。
11.再手術(17-33%)
腸閉塞、後出血や尿道カテーテルトラブルにより追加処置を要することがあります。
12.治療関連死(約3%)
手術中や術後に予期しない合併症、たとえば心筋梗塞や脳梗塞などが起こる可能性があります。このような場合、当院で対応できなければ救急病院へ転院しなければならないことも考えられます。また、いろいろな合併症が重なると手術後回復せず、死亡につながるようなことも考えられます。
13.後期合併症(退院後に起こりうる合併症)
 1)尿道狭窄(新膀胱):尿が出にくくなります。狭くなった箇所を拡げる処置・手術が必要となります。
 2) リンパ浮腫・リンパ管炎:術後、足がむくんだり、炎症が起こったりすることがあります。
 3) 貧血:腸切除によってビタミン欠乏性の貧血を来すことがあります。
 4) アシドーシス:血液が酸性になりそれと伴う骨粗鬆症、全身倦怠感など。

補足2)膀胱温存療法について

浸潤性膀胱がんに対する標準的な治療は、先に説明した膀胱全摘除術です。しかし、様々な理由により膀胱全摘除術が出来ない場合があります。例えば、
 ①全身状態が悪く手術のリスクが高い
 ②尿路変向をしたくないなどの理由から手術拒否
などの場合です。浸潤性膀胱がんの場合何もしなければ数ヶ月以内に血尿などの症状が出たり、転移が出現したりし、それに伴った症状が出ることが予想されます。そのため、このような場合には、放射線と抗がん剤を併用して治療を行います(膀胱温存療法)。当院ではシスプラチンという抗がん剤と放射線療法を併用して治療しています。しかし、この治療法の有効率は手術と比較し、明らかに劣っています。つまり治らない可能性があるということです。
膀胱温存療法に関しては様々な方法があり、筑波大学や大阪医科大学などでは抗がん剤を動脈内に直接投与し、手術と同程度の成績を報告しています。この治療法は当科では出来ませんので、希望があれば紹介しています。膀胱温存療法にはいくつかの問題点があります。一つめは膀胱温存療法の適応基準が明らかになっていないことです。つまり、治療前に膀胱温存が可能かどうか予測することができないのです。また、一口に膀胱温存療法といってもその方法はまちまちで、定まった治療法がないのも問題点の一つです。確かに、膀胱温存療法でがんを克服された方も多くいますが、上に述べたような問題点から(最近は少しずつ明らかになりつつありますが)どうしても研究的な治療の段階でありエビデンスの獲得には至っていません。

 当科では手術ができない患者さんには放射線治療を行っています。浸潤性膀胱がん(筋層内にがんがある)に対する標準的治療は膀胱全摘除術です。しかし、手術のリスクが高い場合にはこの治療はできませんので、代わりに放射線による治療を行います。しかし、手術と比べ放射線治療は明らかに有効性が低下します。放射線単独治療での治癒率は一般的には20-50%といわれています。この有効率を上昇させるためにさまざまな抗がん剤との組み合わせが試みられてきました。シスプラチンは放射線と同時に使用することで放射線の感受性を増強させることがわかっており、放射線治療とよく組み合わせて用いられます。このシスプラチンを動脈内投与し90%以上の有効率を大阪医科大学が報告していますが、この治療法は保険上の制約があり、当院では出来ません(希望する方には大阪医大を紹介しています)。当科では、このシスプラチンを静脈内投与(点滴)し、比較的有効率の高かった治療法を病院に申請し、使用できるようにしてもらいました。このシスプラチン併用放射線治療の有効率は40-70%と報告されています。
また、放射線治療は転移巣にも照射する場合があります。転移巣に対してもシスプラチンを併用した方が効果的であると判断した場合、この治療を行います。
この治療を受けるに当たって重要なことがあります。つまり、膀胱に対する治療では、手術より明らかに劣り、根治できたかどうかはその後の経過に頼らざるを得ないということです。また、この治療後に再発した場合もう手術はできませんし、放射線の追加もできません(ただし、筋層非浸潤がんの場合は、内視鏡的切除で大丈夫です)。抗がん剤治療が主体になりますが、治療はさらに困難になります。

<治療内容>
放射線治療は月曜から金曜まで毎日行います。1回2グレイで約30回予定しています。シスプラチンは第1週目と第4週目に連続5日間行います。シスプラチン投与時には通常腎機能障害予防のために2000ml以上の点滴をしますが、この治療では1回投与量が10mgと少ないので点滴も多くありません(約2時間)。外来での治療も十分可能です(通院治療室)。治療は通常午前中に点滴を行い、午後から放射線治療を行います。

<合併症>
放射線治療によるものがほとんどです。放射線の合併症は早期合併症と晩期合併症(治療後6ヶ月以上)があります。
早期合併症:膀胱刺激症状(頻尿・排尿痛など)、直腸刺激症状(頻便、下痢、しぶり腹など)、排尿困難、血尿、血便、直腸出血など
これらは通常、放射線治療が終了すると徐々に改善してきます。
晩期合併症:直腸出血、血尿、萎縮膀胱、尿道狭窄、潰瘍など 軽度のものから、重症なものでは手術が必要になる場合があります(たとえば人工肛門造設など)。
その他:勃起障害、造精機能低下、二次発がんの可能性などが報告されています。
シスプラチンによるもの:投与量が少ないため、ほとんど合併症はありませんが、食欲不振や、脱毛、骨髄抑制(白血球減少など)などが起こることがあります。重篤なものは嘔気・嘔吐や放射腺性膀胱炎が約3%で報告されています。