治験Q&A

治験に関するよくあるご質問

治験の概要について

Q1.治験って、なーに?
新しい医薬品を開発するには、その研究の最終段階において、国の定めたルールに基づき、実際に「人」を対象とした有効性・安全性を評価しなければなりません。そのためには臨床試験を行う必要があります。

この臨床試験のうち、主に病院で治療中の患者さんを対象に実施する試験を『治験』といいます。
Q2.治験は「人体実験」のようなものと聞いたけれど…
治験は、新しい医薬品の候補に効き目があるかどうか十分な動物実験を経て人に用いられます。治験の開始にあたっては、患者さんの病気の状態と色々な治療方法、治験の特徴と方法、治験による利益と不利益、治験に参加しなくても、あるいは途中でやめても不利益を受けないこと等の十分な説明が行われた上で患者さんの自由な意思が尊重されます。

更に、この様な治療の進め方については、院内の治験審査委員会の承認を得て科学性と倫理性を確保しています。
Q3.誰でも治験に参加できるのでしょうか?
治験では、病気とその状態によって誰でも参加できるものではありません。日常的な診療と共に治験という手段があると考えてください。その状況に応じて治験に参加できる場合は、主治医の説明に加えて臨床研究コーディネーター(CRC)が、治験の補足説明をさせていただきます。
Q4.CRCってなに?

CRCとは、臨床研究コーディネーター(クリニカル・リサーチ・コーディネーター;clinical research coordinator)の呼称です。CRCは、薬剤師や看護師、臨床検査技師などの医療資格者で構成された治験専門のスタッフで、治験に参加される患者さんの安全や人権を守り、質の高い治験が効率よく行われるように支援しています。

具体的には、治験薬の使用目的、使用方法、副作用とその対策の説明補助、スケジュール管理と連絡、新たな情報の提供、院内各部署との調整、ご本人やご家族からの費用や治療の相談、その他さまざまな業務を行っています。

治験の内容について

Q1.どんな治験があるの?
いろいろな治験や製造販売後臨床試験(せいぞうはんばいごりんしょうしけん)がありますので、これらの進め方について説明します。新しい抗がん剤の開発段階と製造販売後に行われる臨床試験は、一般的に下図のように、いくつかの試験を積みかさねることにより成り立っています。

第Ⅰ相試験
少数の患者さんに新しい薬を使っていただき、その薬の安全性、体内での動き及び治療にもっともふさわしい薬の使い方(薬の量など)を調べます。

第Ⅱ相試験
この段階では、多数の患者さんにその薬を使っていただき、その薬効果と安全性を調べます。

厚生労働省の審査・承認
承認によって一般診療で使うことができるようになります。(保険適応)

製造販売後臨床試験(第Ⅲ相試験)
承認された後に行われる製造販売後の臨床試験です。ここでは、多数の患者さんを対象に新しく承認された薬と既存の標準的治療方法との間で効果や安全性を比較します。また、新しい薬と従来の抗がん剤を組み合わせた試験もあります。

治験へ参加するにあたって

Q1.治験に参加した場合、費用はどうなるの?
先ず治験薬に係わる費用は無料になります。また治験薬を使用している間の検査費用も「特定療養費(現在は保険外併用療養費という)」という制度で患者さんの負担が無くなります。

その他には、治験参加の為に行う検査や治験薬の使用が終わった後に行う検査費用についても免除される場合があります。そして治験のための外来日や入院した場合には交通等負担軽減として一定額の支給があります。

なお製造販売後臨床試験では通常このような費用免除はないのですが、日常診療以上に行う特殊検査がある場合は、一部免除されるものもあります。
Q2.副作用が心配なのだが…
治験薬に限らず薬には、日常治療でも使用される薬には期待されるところの「主作用」がありますが、出てほしくない「副作用」もあります。

治験の期間中は、診察やいろいろな検査により副作用の発現について細かく確認することになりますので、患者さん自らも『何か調子が悪い』と感じたら主治医にお申し出ください。治験では参加期間中及びその後を通じて「治験薬が原因となる副作用」が起きた場合には、十分な医療が受けられます。
Q3.治験に参加するメリットは?また、デメリットは?
有利な点
(1)治療の選択肢が増える
(2)現在の標準的治療と同程度、もしくはより良い効果が得られる可能性がある
(3)ご自身で治療を選択し生き方を積極的に決める機会になる
(4)治験や臨床試験にご参加いただくことは、今後の治療を受ける患者さんのためにもなり治療の進歩に貢献する

不利な点
(1)予測しない副作用がみられる可能性がある
(2)新しい治療法が、かならずしも標準的治療と同等又は優れているというわけではない
(3)診察や検査のための来院回数が多くなる可能性がある
(4)併用してはいけない薬や代替療法を禁止されるなど、治験には守らなくてはならない細かな取り決めがある
有利な点と不利な点の(2)を比較すると、相反するような考えですが、これが治験の大きな特徴と言えます。
Q4.治験と臨床試験の違いは?
治験とは、医薬品が世間一般に使えるようになるまでの開発段階にあるものです。新しい医薬品の候補について、その有効性と安全性を確認する目的で治験が実施されます。このような治験を経て医薬品の承認許可を国(厚生労働省)が行います。そして、世の中に出た医薬品の更なる有効性や長期的な安全性を確認するために製造販売後臨床試験があります。このような取り扱いについては、薬事法の中に定められています。

また、国の一般的な承認制度とは別に医師が中心となって進める医師主導型の治験や、市販品の効果・安全性を追及する臨床試験もあります。ここで得られた結果が日常的診療の根拠となるのです。
Q5.割付けって、なに?無作為化って、なに?
医薬品の効果を確認する手段としては、「誰かひとりに効いたから良い」というものではありません。複数のひとを対象に使ってみて、そのうち何人に効果が現れたかを確かめなければなりません。

例えば、臨床試験では「標準的治療をするグループ」と、「新しい治療をするグループ」に分けて実施することがあります。この場合、各グループを均等に分ける必要があり、その作業を「割付け」といいます。こういったグループへの割付けは、いくつかの因子、例えば、患者さんの病気の状態や背景などを基に治療効果の評価に影響すると思われる要素をできるだけ同じにするために行われます。このような割付を「無作為化」といいます。したがって、患者さんや担当医師が治療法を選ぶのではなく、コンピューターによって適切に振り分けられます。
Q6.プラセボって、なに?
プラセボとは、薬としての成分(有効成分)が入っておらず、作用のないもので、偽薬(ぎやく)とも言います。

しかし、このプラセボを薬だと信じて使うことによって、たまたま「効いた」ということがあります。これをプラセボ効果と言いますが、治験薬の本当の有効性を確認するためにプラセボを用いることがあります。

本当の効果は、プラゼボ効果を差し引いたものであると考えられます。プラセボを使った場合と比較することで、有効成分による効果をより正確に比較することができるのです。

なお、プラセボは実薬(治験の場合は、その治験薬)と外見、重さ、味覚等の点で全くそっくりに作られており、医師も製薬メーカーの開発担当者も、中身を分析しない限り判別することはできません。
Q7.治験に参加した場合、プライバシーは守られるのか?
はい、守られます。

一般診療も、もちろんのことですが、患者さんの個人情報は法律で守られています。特に治験を実施する場合は、薬事法という法律において薬の評価が正しく行われているか、治験がきちんと進められているかを調べるために、治験を依頼している製薬会社、当院の治験審査委員会や厚生労働省などの関係者が、カルテや検査結果等を見ることがあります。しかしながら、これらの関係者は患者さんの情報に関して秘密を守る義務があります。また、患者さんの治験で得られた情報に関しては、氏名などをふせて個人が特定できないように匿名化をしています。
Q8.私の病気にあった治験はありますか?また、希望すれば用意してくれますか?
当院では患者さんの病状に合わせて治療を行いますが、それが直ちに治験になるわけではありません。治療方針については、患者さんの病状により保険の範囲で使用できる一般診療が中心となりますが、時には治験も治療の選択肢になることがあります。

治験を受けるには様々な条件があります。例えば、乳がんの治験では、初期なのか再発なのか、また再発においては何次治療なのか、がん細胞が治験薬の作用するしくみに合致するか、ホルモン感受性があるか、肝・腎・骨髄機能は十分か等です。

したがいまして、患者さんのご希望で治験を用意できるものではなく、治験参加の条件に合った患者さんのみ実施いたします。
Q9.治験情報の収集はどうやったらよいの?
一般的にどのような治験があるのか、また参加の条件についてお知りになりたい時は、個別に質問されたり治験広告を調べて確認することになると思われます。

治験の広告については、院内掲示・広報や新聞掲載に限られるので、これらから治験の情報収集を行う場所は物理的にも時間的にも苦労すると考えます。しかしながら、最近ではインターネットを利用して治験情報を得ることもできます。ちなみに「治験情報」をキーワードとしてインターネット検索をしてみると、膨大なヒット件数です。これはこれで多すぎる情報なのかもしれません。
Q10.治験への参加をすすめられたが、すぐに決めなければならないの?
よくお考えいただいてから決めてください。

治験の参加に際しては、担当医師などから文書による説明があります。そして、ご自身の意思にて決定することはもちろんのことですが、説明文書の内容をご家族とも十分に確認、相談してから決めていただきます。

その理由としては、治験の効果や副作用の事、スケジュールに合わせた来院方法の事、医療費の事などをご家族の方にも理解、協力していただく場合があるからです。
Q11.治験の参加をすすめられていますが、家族が反対しています。
自分は参加したいと思うのですが、どうしたらよいでしょうか?
前の質問(Q10)の回答でも述べましたが、ご家族とよくご相談の上、治験への参加を決めていただくことになります。

治験参加に際しては、ご自身の自由意思が一番に尊重されるので、ご家族が疑問に思っていることがありましたら、担当医師や臨床研究コーディネーター(CRC)に相談いただいて問題を解決していきましょう。その時には、ご家族と共に治験の利益、不利益及び通常の治療方法などを考えることになります。

CRCについては、過去の質問(Q4)にて紹介済みですが、治験の患者さんに様々な支援業務を行う専門のスタッフ(薬剤師、看護師、臨床検査技師)とご理解ください。
Q12.治験を断わったらどうなる?
今後の治療において何らかの不利益、不都合を受けることは一切ありませんので、ご安心ください。

前の質問(Q11)の回答の繰り返しになりますが、治験に参加するかどうかはご本人の自由意思によります。

また、治験に参加することを一旦同意した後でも、いつでも自由にその同意を撤回することができますし、その場合でも不利益、不都合は受けません。
Q13.自分が受けることになる治験の事を詳しく聞いてみたいのだが…?
基本的には担当医師から通常の治療方法に加えて治験の説明がありますが、その補足的な説明を臨床研究コーディネーター(CRC)が行いますので、治験の説明文書と合わせてご確認ください。
Q14.健康な一般の人に対する治験ボランティアはありませんか?
当院では健康な方を対象とした治験は実施しておりません。

一般的な薬については、原則として肝臓や腎臓などの生体機能が十分確保されている男性にボランティアとして参加いただき、薬の安全性を調べる第Ⅰ相試験(だい・いっそう・しけん)というものが実施されています。

抗がん剤の治験にも第Ⅰ相試験はありますが、当院の抗がん剤を主とした治験では、がんの患者さんに参加いただき、その薬の有効性や安全性を調べるものに限っております。
Q15.治験の効果はどの様に確認しているのですか?
実施される治験によっては、その目的に合わせた効果の確認方法(評価の検査法)が決まっています。例えば、がんの大きさがどの様に変化しているのかについては、CT検査等の結果を用いることになります。

写真は、その効果判定のために、がんの大きさを計測しているところです。

Q16.治験薬を飲んで(使って)調子が悪くなったら、どうする?
先ずは、当院(担当医師など)に連絡をお願いします。患者さんが体調不良となった場合には、臨機応変に対処できるようにしてあります。

体調不良が発生した時には、その薬との因果関係の有無に関わらず全てを確認して対処する必要がありますので、その際には必ずお申し出ください。
Q17.(医療従事者の方から)治験に関する見学をさせてもらいたいのだが…
四国がんセンターの治験管理室では、随時、研修生を受け入れています。

研修生には院内規程に従って個別情報の守秘義務が課せられます。研修生の資格としては医療従事者であること、実施する日程は研修者のご希望に応じますが、通常は数日~数週間を要します。

Q18.治験では、いろいろな検査をすると聞きましたが、本当ですか?
はい。通常のがん治療においても必要な検査を実施していますが、治験では患者さんの病態や新しい薬の特徴を知る上でも、細かい検査スケジュールが決められており、いろいろな検査をすることになります。
Q19.(上記質問に追加して)じゃあ、どんな検査があるのですか?
大別すると、薬の主作用(効果)と副作用の有無などの安全性を確認するものがあります。

抗がん剤の治験では、CTやMRIの『画像検査』により主作用(効果)を確認するもの。副作用については、『血液検査』や『尿検査』から肝臓・腎臓の機能が十分かどうか、抗がん剤治療の特徴でもある骨髄抑制(血液の状態を確認して貧血や出血傾向、感染症の有無など)が出ていないか、『心電図検査』から心臓の機能をチェックする等です。

その他に抗がん剤の治験に特有なものとして、『薬物動態(やくぶつ どうたい)検査』というものがあります。この検査は、薬が身体の中でどのように変化しているのかを確認するためのものです。
Q20.『薬物動態検査』について、教えてください。
薬は口から飲むもの(内服薬)、注射薬、はり薬・ぬり薬や坐薬のような外用薬といった種類があります。はり薬やぬり薬の大部分は、局所(患部)で効果を発揮しますが、全身に影響を及ぼす内服・注射薬などは身体に取り込まれた後、血液中に入って全身をかけめぐります。次に、主成分は肝臓で代謝を受けた後、腎臓でろ過されて、やがては身体から尿や便になって排出されるのが一般的です。

一部の治験では、このような身体の中における薬の変化を『薬物動態検査』として確認します。検査の例示としては、治験薬(内服・注射)を使う前、その後の15分、30分、1時間、2時間、4時間・・・24時間といった細かいスケジュールで何回か採血を行います。更に治験によっては、治療後の尿を容器にためておいて、その薬物濃度を調べるものもあります。


薬物動態検査


血清分離処理

Q21.治験は危険なものではないですか?
回答としては、危険なものではないとは言い切れません。通常の薬物治療でも全く副作用がないものはありませんが、特に治験においては既知の副作用や未知の有害事象がでる可能性があります。

しかしながら、治験では新しい薬に期待する効果(有効性)を確認すると共に、出て来ては欲しくない副作用といったものに万全の医療体制にて随時対応(安全性への確保)できるようにしてあります。治験では、「くすりの候補」となる物質を人に試すこととなりますので、治験に参加していただく方の人権や安全が最大限に守られなければなりません。それと同時に、「くすりの候補」の効き目や安全性を科学的に調べなければなりません。

このような治験の進め方については、院内の治験審査委員会の承認を得て倫理性と科学性を確保しています。
Q22.治験審査委員会って何?
「治験審査委員会」とは、実施する治験の内容が参加される患者さんの人権や安全性を守れるものかどうか(倫理性の確保)、かつ科学的に十分な方法かどうか(科学性の確認)を審査する病院内に設置されている組織です。

治験審査委員会では、実施しようとする治験が患者さんに著しく不利益が生じるおそれがある場合や、治験の計画に無理があると判断される場合などは、その治験を承認しないことになっています。一方、委員会にて承認となった場合は、病院長の了承の上、順次実施されることになります。

また、治験審査委員会には、医学、薬学等の専門委員(医師、薬剤師、看護師ら)以外にも事務系の委員や病院と利害関係のない外部委員を含むことが義務づけられています。
Q23.治験中は健康食品を摂取してもいいですか?
先ずは、医師・薬剤師等にご相談ください。

健康食品と称されるものには、内容成分が不明なもの、明らかなものであったとしても何らかの作用が治験薬に影響するもの(飲み合わせが悪い)等があると考えられます。これらの健康食品の使用については、治験薬に期待する効果を減弱させたり、思わぬ副作用が出た場合に何が原因か不明では困ります。

治験の実施においては健康食品からの影響を回避するために、かつ治験薬の正しい有効性と安全性を評価するためにも、治験中に健康食品を摂取する場合はご相談ください。

なお、この様な考え方は日常の治療においても同様であり、薬物治療の真の効果と副作用を見極めるためにも是非ご理解ください。
Q24.治験に参加したら医療費はどうなる?
基本的には、治験薬(内服・注射・外用)を使用する期間における治験薬とその同種同効果薬(治験薬と同じ効果のある薬)、検査代は治験を依頼してきている製薬会社が負担します。これは、『特定療養費(現在は保険外併用療養費という)制度』に基づいて、治験薬を使用している期間中は製薬会社が費用を負担することになっているのです。

一方、治験中でも参加いただく患者さんの持病に対する薬代、治験薬の副作用に対する薬代(一部には健康被害の補償対象となる場合は例外もあります)、処置・手術、及び基礎診療代などは、通常保険にて患者さんにご負担いただくことになります。

また、その他にも治験の特徴によっては、患者さんの医療費負担を軽減するものもありますので、詳細な説明は治験開始時に医師や臨床研究コーディネーター(CRC)にお尋ねください。


注釈:ピンク色の部分が治験を依頼した製薬会社が負担をする

Q25.臨床研究コーディネーター(CRC)の業務について紹介してください。
CRCは、上記や過去の質問・回答の「4」「21」「27」にて紹介済みですが、治験の患者さんに様々な支援業務を行いながら、治験実施上の必要なデータ整理を行う専門のスタッフ(薬剤師、看護師、臨床検査技師)とご理解ください。

業務内容は、(1)治験開始前、(2)実施中、(3)終了後の三期に大きく分かれますが、(1)開始前においては、どういった治験なのか自己学習の上、院内関係者への説明をして、適確に治験が実施できるように色々な準備を行っています。具体的には、どの様な患者さんが治験に参加できるのか、治験前の治療にはどういったものが実施されたのか、どんな副作用が出ていたのか、合わせ持つ病気はあるのか、またその併用薬剤は何か、必須検査の確認や日程調整、患者さん・ご家族の方からの相談に対応など多岐にわたります。(2)実施中では、治験薬の処方準備・確認、個々の患者さんの来院・検査スケジュールの調整をしながら、主治医による有効性の判断材料となるCTなどの検査結果を確認したり、副作用発現時にはいつまで続いているのか等の追跡確認を行いつつ、患者さんへの支援業務を実施しています。最後に、(3)治験終了後は、治験実施によって得られたデータを症例報告書(患者さんの来院に合わせて、随時、記録しているものもあります)として完成させる作業の補助に就きます。
Q26.治験はいつまで続くのですか?また、終了後はどうなるの?
先ず、治験の実施期間はそれぞれの治験によって定められていて、どの位の期間を実施するのかは様々です。ただし、抗がん剤の治験では、基本的に効果があって副作用が少なくて、患者さんのご希望がある等の場合は使用し続けることができます。

一方、治験を終了する理由としては、期待する効果がなかった場合や副作用の出現によって継続することが困難な場合等があげられます。

治験の終了後については、主治医からその後の治療方針などの適切な説明があります。
Q27.治験の途中でやめたくなったら、どうすれば良い?
治験の参加に関しては、患者さんご自身の自由意思によるものです。したがいまして、治験参加に同意しないことや、途中でやめる(同意を撤回する)ことができます。

やめたいと思われた際には主治医や臨床研究コーディネーター(CRC)にお申し出ください。
Q28.治験に参加したところ、身体に良くないものとして「有害事象」とか
「副作用」とかの言葉を聞くけれども、それはどういう意味ですか?
有害事象とは、治験薬を使用(飲み薬、注射薬、外用薬など)又は医療機器を使用した患者さんに生じたあらゆる好ましくない事象の全てを指します。(例えば、骨折した、虫歯ができた、口内炎ができた等)

また、副作用とは、その有害事象の中でも使用した治験薬(治験の医療機器)との因果関係が否定できないものをいいます。(例えば、吐き気がある、下痢をした、髪の毛が抜けた等)

つまり、2つの用語の位置づけとしては、有害事象の中に副作用が含まれます。いずれにしても、治験実施中にお身体の不調があれば必ずお申し出ください。

Q29.治験に参加した場合、病院に行く予定が決められていますが、
仕事の都合で日程が合わなかったらどうする?
来院日については、治験の内容にもよりますが、日程調整することは可能です。

治験にご参加いただいた場合には、検査や診察のための来院が決められます。具体的には尿・血液検査、心電図、CT等の幾つかの検査、診察、治療といったものがあり、通常診療より来院回数が多くなることがあります。しかし、決められた来院日には、許容範囲が設けられていますので、上手くお仕事の都合に合わせるように対応致します。
Q30.(上記に引き続いて)それでも、交通が不便で迷っているのだが…
先ず、治験に参加いただいた方には、被験者負担軽減費が支払われます。これは、来院に伴った交通費、昼食代に加えて検査が多くなったり、来院回数が多くなったり等、ご負担をお掛けしていることへの軽減費(交通費等の支給)とご理解ください。外来毎に、当院の治験審査委員会で定められている額の口座振り込みとなります。また、入院された場合は、入院から退院までが1回分として支払われます。なお、この様な取り扱いは原則として治験に限りますが、一部の製造販売後臨床試験に適用されることもあります。

次に、通院が遠方などの理由で困難な場合、当院には敷地内に患者さんやご家族の方が宿泊できる施設「患者支援センター 向日葵(ひまわり)」がありますので、こちらをご利用いただくことも問題解決の一手段かもしれません。食事は付きませんが、宿泊費用は、1泊1名様2,400円(税抜)です。宿泊に関するお問い合わせ先は「089-999-1187」です。
Q31.既に治験に参加しているのですが、家族がどうしてもやめろと言って
います。どうしたら良いでしょうか?
先ずは主治医や治験のスタッフを交えて相談しましょう。治験の参加に際しては、色々な説明を患者さんご本人に聞いていただいておりますし、また、ご家族の協力も必要になるので、ご一緒に最初から話を聞いていただく方針です。

今回、ご家族が反対されている理由や問題点がどのような事なのかを伺いながら、患者さんとご家族が納得いただくような話をしたいと思います。その時には、ご家族と共に治験参加による利益、不利益及び通常の治療方法などを考えることになります。

なお、治験の参加や継続に際しては、あくまでも患者さんご本人の自由意思により決定されるものです。
Q32.がんの新しい薬で分子標的薬剤というものを聞いたのですが、
どんな薬ですか?また、そういったものの治験はありますか?
ご質問の薬は、がん細胞だけを攻撃してその増殖や転移を抑えてくれるというもので、正常な細胞には悪影響(副作用)が少ないとされています。また、新しいタイプの医薬品としては、抗体を利用して、がん細胞だけを攻撃するものもあります。

これらの医薬品に関しては、副作用が少なく期待する効果も大きいのですが、その安全性と有効性は治験の段階を経て確認されています。

今後の治験では、このような新しい作用を持った抗がん剤が順次開発され、また従来の薬剤との併用治療も治験として実施していくことになります。なお、具体的な適応がん種やその治験に参加いただけるかどうかは患者さんのお身体の状況と治験実施のルールに応じて決定されます。
Q33.治験参加中に、他院での入院治療が必要になりました。それぞれの
医師の方々には、どんなことをお知らせすればいいのでしょうか?
ご質問の様な場合は、治験薬と何らかの関係が生じているものと思われるので、他院の医師には治験参加の旨を、また当院の医師等には入院の事実・経緯をお知らせください。

治験に参加中の患者さんには、「治験参加カード」をお渡しすることがあります。これは、その期間中に他の病院を受診された場合など、出来るだけ早く治験担当医師が連絡をとることが出来るようにするためという役割があります。治験参加期間中、患者さんに起こった好ましくない事象(副作用など)を確認の上、報告する必要があります。特に、治験中につき併用してはいけない薬などもあり、それらの使用によって治験の継続に支障をきたす場合もあります。

治験参加カードをお持ちの場合は、他院の初診時に提示し、カードをお持ちでない場合も出来るだけ早く参加の旨を伝えてください。
なお、他院受診の予定がわかっている場合などは、事前に治験担当医師か担当CRC(臨床研究コーディネーター)にお知らせください。
Q34.治験に参加すると、必要なデータを見るということで、診察時に
部外者の方が立ち会う事もあるのでしょうか?
治験に参加されますと、通常、今までの見慣れた看護師等の他に、臨床研究コーディネーターと呼ばれる看護師や薬剤師、臨床検査技師が、スタッフの一員として同席させていただくことになります。しかし、それ以外の部外者が診察室等に入ることはありません。もし万が一、医療に関わる研修者の立ち会いが必要になった場合には、理由を説明させていただき了承をいただいた上で行わせていただきます。

もし、治験中の対応に不備がありましたら、臨床試験支援室までお申し付けください。
Q35.治験に参加し、次に病院に来るのは半年後と聞きました。それまでに
予定が変わり、予約の変更をしたい場合は、どうすればよいでしょうか?
予約の変更は可能です。しかし、治験に参加中、来院・検査等のタイミングの多くは、○月○日から△月△日の間と決められていますので、その期間内で変更可能です。それを外れると、せっかくの検査の結果や診断結果が治験用に使えないという可能性が高くなります。治験に参加中である旨、当院予約コーナーにお伝えいただければ、担当医あるいは担当コーディネーターが相談に応じます。お早めにご連絡ください。
Q36.新しい抗がん剤が、早く使えるようにならないのでしょうか?
海外では使える新規抗がん剤が日本ではまだ使えないという実状があります。厚生労働省では、新たな治験活性5カ年計画を基にいろいろな対策を取りつつあります。改善に向けてはやや時間を要するものの一歩ずつ前進していると考えます。

具体的には、当院も治験の中核病院の一部に位置付けられ、より一層の治験推進を行います。また、治験実施の状況や治験実施後の承認(国が薬として認めること)結果などが公開されることになります。

なお、舛添厚生労働大臣が承認審査に係わる審査官を増員して審査の時間短縮を公表したことが話題になっています。
Q37.貴院では、抗がん剤の感受性試験を受けることができますか?
四国がんセンターでは、現在のところ、すべての抗がん剤において個々の感受性試験は行っておりません。

研究的なものとして、抗がん剤の中には腫瘍細胞特有の感受性を確認して効果の可能性がある薬剤を選択したり、薬剤耐性の有無を試験するものがあります。当院では保険適応の抗がん剤の一部において感受性をみたり、治験薬の一部でも実施しているものがありますが、すべての抗がん剤で実施しているものではありません。
Q38.最近の抗がん剤には、がん細胞が大きくなるための血管をやっつけてくれるもの
があると聞きましたが、どの様なものですか?また副作用はないのでしょうか?
ご質問の抗がん剤は、Q42で説明した分子標的薬剤を意味します。がん細胞が大きくなるためには、腫瘍に栄養を供給することを目的に新生血管が作られます。がん細胞は増殖のために新たな血管を導くよう信号を送っているのですが、薬剤の作用機序はその信号を止めようとするものです。

この様にがん細胞だけを標的とする抗がん剤とはいえども、正常組織への影響が全くないわけではありません。正常な血管への影響が「高血圧」といった副作用として出ています。分子標的薬剤の中には、従来の抗がん剤とは違った副作用が出現することがあるので、身体の変調が現れた場合には必ず治療を受けている病院に連絡を図ってしかるべき対応を受けるようにしてください。

なお、最近の治験薬には分子標的薬剤が多く用いられているので、あらゆる副作用に留意して治験が実施されています。