治療法の選択に関して

治療法の選択に関して

がんの種類によっては放射線や抗がん剤が有効なものがありますが、腎がんの場合初回治療としてこれらは有効ではありません。分子標的薬の登場により大きく変わりましたがそれでも手術には遠く及びません。そのため、腎がんでは手術が第一選択になります。ステージⅠからⅢまではまず手術可能と考えられますので手術を行います。Ⅲ期の中で下大静脈に腫瘍塞栓がある場合には適応は慎重になりますが、まず手術を考えるべきです。手術後の再発予防に関しては現在のところ適切な治療はありません。もし再発すれば、そのときの状況に応じて転移巣の切除や薬物治療を開始することになります。

ステージⅣの場合でも、手術が可能であれば転移巣の切除も含めて手術を考えます。転移巣の切除は出来ないが、原発巣(腎)の摘出が可能であれば手術を行い、その後薬物治療を行います。最近の報告で、手術後にスーテントを内服した群と手術をせずにスーテントのみで治療した群でスーテント群が良かったという報告があり、ステージ4の手術は再検討が必要になってきています。もし手術が不可能であればはじめから薬物治療を開始することになります。

薬物療法の場合どの薬剤を使用するかが問題となります。ガイドラインでは各薬剤に対して行われた臨床試験の対象者をもとに推奨する薬剤を決めています。この場合、下記に示すリスク分類を検討してから薬剤を決定することになります。このリスク分類は、IMDC(International Metastatic RCC Database Consortium)から提唱されたもので、リスク分類の予後因子(KPS<80%、診断から治療開始まで1年未満、ヘモグロビンが基準値下限未満、補正カルシウム値が基準値上限を超える、好中球絶対数が基準値上限を超える、血小板絶対数が基準値上限を超える)のうち1~2個満たす患者さんは中間リスク、3~6個満たす患者さんは高リスクに分類されます。

リスク因子
基準値
KPS(全身状態)
80%未満
診断から治療開始までの期間
12個月未満
ヘモグロビン
正常下限未満
補正カルシウム値
基準値上限を超える
好中球数
基準値上限を超える
血小板数
基準値上限を超える

(KPS:Karnofsky performance status, KPS<80:正常の活動・労働ができない状態)

2019年に提唱された海外のガイドラインから日本で使用可能なものを表に示しました。

組織型および
IMDC リスク分類
初回治療
セカンドライン治療
サードライン治療
淡明細胞がん
予後良好
スーテント
ヴォトリエント
オプジーボ
インライタ*
アフィニトール*
インライタ*
アフィニトール*
中間
ヤーボイ+オプジーボ
スーテント*
ヴォトリエント*
前治療が TKI ならオプジーボ
TKI*
別の TKI*
アフィニトール*
予後不良
ヤーボイ+オプジーボ
スーテント*
ヴォトリエント*
前治療が TKI ならオプジーボ
TKI*
別の TKI*
アフィニトール*
非淡明細胞がん
スーテント
ヴォトリエント

アフィニトール*
肉腫様成分なら
 ヤーボイ+オプジーボ*
 スーテント*、ヴォトリエント*

*:オプション
チロシンキナーゼ阻害剤(TKI);ソラフェニブ、スーテント、インライタ、ヴォトリエント

薬物療法以外の治療として、がんに対しては積極的な治療を行わず、痛みや苦しみなどの症状を軽減するための治療、緩和治療があります。