手術療法
腎尿管全摘除術が一般的です。この手術は、腎から尿管のすべてを切除します。副腎はがんの進行によっては切除することがあります。また、尿管は膀胱内へ続いているため膀胱の一部も切除することになります。尿路上皮がんは異時性・異所性多発することが多いため、画像で腎盂のみあるいは尿管のみにしか病変がなくても腎から尿管まですべてを切除することになります。腎臓は左右に1つずつあり、片方の腎臓を摘出してももう一方の腎臓が正常に機能すれば生活上の制限はほとんどありません。ただし手術前から腎機能が悪い人は注意を要します。手術方法は開腹手術と腹腔鏡手術があり、腹腔鏡手術の中にロボット支援手術があります。いずれの手術も全身麻酔下の手術となります。
膀胱がんではこれまで広範囲のリンパ郭清をした方の予後がよくなると信じられていましたが、2024年に限局郭清と拡大郭清で予後に差がなかったことが報告され、リンパ郭清の治療的な意義はあまりないことになりました。しかし、正確なステージ診断ができることは揺るぎない事実です。腎盂尿管がんではまだこのような報告はなくリンパ郭清の意義は不明ですので、必要に応じて行うようにしています。以下に各術式の特徴を示します。
| 開腹手術 | 腹腔鏡手術 | ロボット支援手術 | |
|---|---|---|---|
| 長所 | ・従来からの方法 ・リンパ節郭清が確実に行える ・特殊な機器は不要 |
・低侵襲 ・傷が小さい ・拡大視野で術者と同じ視野を共有 ・気腹圧で出血が抑えられる ・一般的な腹腔鏡手術の機器で可能 |
・低侵襲 ・腹腔鏡手術よりもさらに傷が小さい ・3次元で鮮明な画像を共有しながらの手術 ・手術器具の操作性が良い ・気腹圧で出血が抑えられる |
| 短所 | ・傷が大きい (みぞおち~恥骨まで) ・視野が悪い ・出血量が多い |
・2次元画像(最近は3次元のものもある) ・専門の研修が必要 ・手術器具の操作に制限を受けることがある |
・高価な手術器具が必要 ・触覚がない ・専門の研修が必要 |
ロボット支援・腎尿管全摘除術
横向きの体勢で脇腹(肋骨と骨盤の間)に5-12mmの穴を5-6か所あけ、ロボットをドッキングして手術を開始します。まずは腹腔鏡の方法と同様にして腎臓を遊離します。続いてロボットのアームのドッキング位置の調整を行った後に尿管の処理を開始します。体腔内で尿管の剥離を膀胱に入っているところまで進めて、膀胱内の尿管口(膀胱の一部)を含めて、摘除します。膀胱壁を吸収糸で縫合し、腎尿管摘除は終了です。次いでリンパ郭清を行います。
リンパ郭清の範囲はがんの場所によって右の図のように決めています。腎盂にある場合、上部~中部尿管にある場合、下部尿管にある場合でそれぞれ異なります。出血がないことを確認し、ドレーンを留置します。ロボットを外したのちに、あらかじめ袋に入れておいた組織を体外へ取り出します。その後閉創して手術を終了します。

開腹・腎尿管全摘除術
開腹手術ではみぞおちのところから恥骨まで切開し、まず、腎と尿管を摘除します。尿管摘除時には膀胱壁も一部切除します。リンパ郭清はロボット支援手術と同じです。

腹腔鏡・腎尿管全摘除術
腹腔鏡の場合、腎~中部尿管までを腹腔鏡により切除し、下腹部正中切開(臍と恥骨の間をまっすぐ縦に切開します)にて下部尿管の摘出を行います。リンパ郭清はロボット支援手術と同じです。
(補足)腎温存手術
限局した尿管のみにがんがある場合、尿管部分切除術が行われることがあります。しかし、残った部分に再発する危険性があり、一般的ではありません。診断されたがんが低悪性度でステージも早期であれば再発率も低いのですが、術前に悪性度やステージを正確に診断するのは腎盂尿管がんでは困難です。また、腎盂尿管がんでも内視鏡手術、たとえばYAGレーザーなどでの腫瘍焼灼術が試みられていますがこれらもまだ一般的ではありません。
腎盂尿管がんの上皮内癌に対して、腎温存治療の一つとしてBCG注入療法があります。BCGは弱毒化した(抗原性を失うことなく病原性を少なくした)結核菌で結核予防のための抗結核ワクチンです。膀胱上皮内がんでは非常に有用で、BCG膀胱内注入は標準的な治療になっています。腎盂尿管がんでも上皮内癌に対して有効性を示した報告はありますがまだ一般的ではありません。具体的な方法は、腎盂内にカテーテル(細い管)を留置し、BCGを注入します。注入回数は6回が多いですが、1回投与量やBCGの注入濃度や注入速度なども一般化されておらず、問題点の多い治療法です。
化学療法
薬物療法には2つの適応があります。
- 周術期化学療法(手術前後に行うもの)
- 局所進行(手術ができない)や転移に対して行うもの
抗がん薬の進歩はめざましく、今後新たな抗がん薬や新たな組み合わせによる治療法が出てくると思われます。現在使用可能な抗がん薬には以下のものがあります。
- ddM-VACとM-VAC療法
メソトレキサート、ビンブラスチン、アドリアマイシン、シスプラチンの4種類の抗がん薬を組み合わせた治療で、4週間で行っていたものを2週間にしたものがddM-VACです。 - GC療法
シスプラチンとゲムシタビンの2種類の抗がん薬を組み合わせた治療で、4週ごとに繰り返します。 - バベンチオ(アベルマブ)
根治切除不能または転移性の尿路上皮癌で、化学療法を施行後、明らかな病勢進行の無い患者さんがこの治療の対象となります。1回あたり10mg/kg(体重)を2週間間隔で点滴して治療を行っていきます。1回の点滴は1時間程かかります。 - オプジーボ(ニボルマブ)
浸潤性尿路上皮がんの根治的切除を受けた患者さんがこの治療の対象で、術後補助化学療法になります。1回あたり240mgを2週間間隔、または480mg を4週間間隔で点滴治療を行います。1回の点滴は45-60分程かかります。 - パドセフ(エンフォルツマブ・ペドチン)
プラチナ製剤を含む化学療法及びPD-1/PD-L1阻害薬治療後に増悪した局所進行性、または転移性尿路上皮癌の症例がこの治療の対象となります。1回あたり1.25mg/kg(体重)を30分以上かけて点滴静注し、週1回投与を3週連続し、4週目は休薬します。これを1サイクルとして投与を繰り返します。 - パドセフ+キイトルーダ
未治療の局所進行または転移性尿路上皮癌が対象で、パドセブとキイトルーダの併用療法を行います。点滴で行います。3週を1サイクルとして投与を繰り返します。1週目にパドセフとキイトルーダを投与、2週目にはパドセフのみ投与します。
M-VACとGC療法は周術期でも転移症例でもどちらでも使用できますが、その他の化学療法は使用できる時期が決められています。これまで報告された試験の結果から、周術期化学療法ではddM-VACを、局所進行あるいは転移症例にはパドセフ+キイトルーダを基本に当科では行っています。
放射線療法
放射線療法は、高エネルギーのX線でがん細胞を傷害し、がんを小さくする効果があります。しかし、腎盂尿管がんでは放射線の効果はあまり期待できません。痛みなどの症状緩和に使用することがほとんどですが、がんの部位によっては抗がん薬と併用し縮小効果が期待できる場合があります。
(2025年1月更新)




