陰茎がんについて
陰茎がんの組織型(顕微鏡での分類)は95%以上、扁平上皮がんです。その他の組織型として基底細胞がんやメラノーマ(悪性黒色腫)、肉腫(カポジ肉腫など)などがありますが頻度は少ないです。陰茎がんの罹患率は先進国では非常に低く、10万人あたり1人未満です。しかし、発展途上国での罹患率は依然として高く、アジアやアフリカ、南アメリカのいくつかの地域では、その発生頻度は10万人あたり20人を超える地域もあります。しかもこれらの地域では陰茎がんの男性がんに占める割合が10%-20%にも及ぶのです。
陰茎がん発生のリスクファクターとしては年齢、喫煙、包茎、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染、が知られています。陰茎がんの好発年齢は60歳であり、若年者にはほとんど発生しません。また、喫煙者は非喫煙者に比べて3倍発生率が高く、包茎があると陰茎がんの発生は10倍以上高いとされます。HPVの感染は陰茎がんの最も強いリスクファクターです。陰茎がんの27-71%でHPVに感染しており、最も多いサブタイプは16型と18型です。
陰茎には良性腫瘍も発生します。その代表は、尖圭コンジローマです。尖圭コンジローマは性行為感染症としても有名で、尖圭コンジローマの原因ウィルスもHPVですが、陰茎がんとはサブタイプが異なり6型と11型です。これらウィルスの悪性能力は低く、通常がん化することはありません。陰茎には通常の皮膚と同じように様々な腫瘍ができます。良性腫瘍の中にも前がん病変として認識され、注意が必要なものがあります。この場合には生検をして区別することが重要です。
陰茎がんはリンパ行性転移をきたしやすく、初診時に鼠径部リンパ節腫大を約60%に認めます。しかし実際にリンパ節転移であるものはこの半分であり、残りは炎症性腫大です。陰茎がん全体での5年全生存率は52%と報告され、リンパ節転移がなければ66%、リンパ節転移があれば27%、骨盤内リンパ節転移があればさらに低くなります。
診断
陰茎がんの初発症状は様々ですが、まず外観上の異常として認識されます。すぐに診断がつきそうなのですが、陰茎の異常を自分で自覚してから実際に医療機関に受診するまで平均10ヶ月とされ、半数以上が1年以上経過してから受診しているのです。初診時の外観は、カリフラワー状に外方に発育するものや結節を形成するものが約半数で、残りは湿疹様の発赤や潰瘍形成、炎症性変化など腫瘤を形成しないので注意が必要です。発生部位は亀頭が最も多く48%、包皮に限局しているのが21%、両者が9%、冠状溝が6%で陰茎体部に発生するのは2%以下です。早期では外観上の変化以外にほとんど症状を認めないことが多いのですが、時に包皮のかゆみや灼熱感をきたすことがあります。進行すれば出血や瘻孔形成、尿道閉塞などをきたします。
陰茎がんの確定診断は生検によってのみ得られます。したがって、異常部位の注意深い観察が必要で、悪性が疑われたら生検が必要となります。生検により悪性度を含む病理学的診断が得られ、これが治療法決定に重要となります。
病理診断が得られれば、CTやエコーなどの画像検査によりステージ診断(進行度)がなされます。陰茎がんではリンパ節の評価が非常に重要になります。陰茎がんの所属リンパ節は鼠径部リンパ節(深部・浅部)と骨盤内リンパ節です。診断時に鼠径部リンパ節腫大を認めるのは58%(20-96%)と報告されていますが、その中で実際にリンパ節転移を認めるのは半数で、残りは炎症性腫大なのです。リンパ節転移の有無は予後に直結するため診断は正確に行わなければなりません。そのため、原発巣の組織学的所見とリンパ節腫大の有無によりアルゴリズムが作成されており、このアルゴリズムに従い、リンパ節生検やリンパ郭清が施行されます。
臨床病期
TNM分類(2017年)
T 原発腫瘍
- TX:原発腫瘍の評価が不可能
- T0:原発腫瘍を認めない
- Ta:非浸潤性限局性扁平上皮癌
- Tis:上皮内癌(Penile intraepitheial neoplasia [PeIN])
- T1:亀頭部 上皮下結合組織に浸潤する腫瘍
包皮 真皮、上皮下結合組織または肉様膜に浸潤する腫瘍
陰茎幹 表皮と海綿体間の結合組織に浸潤する腫瘍- T1a:脈管浸潤/神経周囲浸潤がなく、かつグレード1~2
- T1b:脈管浸潤/神経周囲浸潤がある、あるいはグレード3以上
- T2:尿道海綿体に浸潤する腫瘍(尿道浸潤の有無はとわない)
- T3:陰茎海綿体に浸潤する腫瘍(尿道浸潤の有無はとわない)
- T4:その他隣接臓器への浸潤
cN 領域リンパ節(臨床診断)
- cNX:領域リンパ節の評価が不可能
- cN0:触知しない
- cN1:片側可動性のあるリンパ節触知
- cN2:多発または両側に可動性のあるリンパ節触知
- cN3:非可動性の鼠径リンパ節触知、または骨盤リンパ節転移(片側、両側とわない)
pN 領域リンパ節(病理学的診断)
- pN0:リンパ節転移なし
- pN1:片側2個以下のリンパ節転移
- pN2:片側3個以上のリンパ節転移、または両側リンパ節転移
- pN3:骨盤リンパ節転移あり、または領域リンパ節の節外進展あり
M 遠隔転移
- M0:遠隔転移なし
- M1:遠隔転移あり
G 病理組織学的分類
- GN:評価不可能
- G1:Well differentiated
- G2:moderately differentiated
- G3:Poorly differentiated/high grade
ステージ分類
- ステージ0期:TaかTisでリンパ節転移および遠隔転移なし
- ステージ1期:T1aでリンパ節転移および遠隔転移なし
- ステージ2期:T1b-T3でリンパ節転移および遠隔転移なし
- ステージ3期:T1-T3かつN1-2で遠隔転移なし
- ステージ4期:T4あるいはN3あるいは遠隔転移あり
(2025年1月更新)




