診断について

診断

陰茎がんの初発症状は様々ですが、まず外観上の異常として認識されます。すぐに診断がつきそうなのですが、陰茎の異常を自分で自覚してから実際に医療機関に受診するまで平均10ヶ月とされ、半数以上が1年以上経過してから受診しているのです。初診時の外観は、カリフラワー状に外方に発育するものや結節を形成するものが約半数で、残りは湿疹様の発赤や潰瘍形成、炎症性変化など腫瘤を形成しないので注意が必要です。発生部位は亀頭が最も多く48%、包皮に限局しているのが21%、両者が9%、冠状溝が6%で陰茎体部に発生するのは2%以下です。早期では外観上の変化以外にほとんど症状を認めないことが多いのですが、時に包皮のかゆみや灼熱感をきたすことがあります。進行すれば出血や瘻孔形成、尿道閉塞などをきたします。
陰茎がんの確定診断は生検によってのみ得られます。したがって、異常部位の注意深い観察が必要で、悪性が疑われたら生検が必要となります。生検により悪性度を含む病理学的診断が得られ、これが治療法決定に重要となります。

病理診断が得られれば、CTやエコーなどの画像検査によりステージ診断(進行度)がなされます。陰茎がんではリンパ節の評価が非常に重要になります。陰茎がんの所属リンパ節は鼠径部リンパ節(深部・浅部)と骨盤内リンパ節です。診断時に鼠径部リンパ節腫大を認めるのは58%(20-96%)と報告されていますが、その中で実際にリンパ節転移を認めるのは半数で、残りは炎症性腫大なのです。リンパ節転移の有無は予後に直結するため診断は正確に行わなければなりません。そのため、原発巣の組織学的所見とリンパ節腫大の有無によりアルゴリズムが作成されており、このアルゴリズムに従い、リンパ節生検やリンパ郭清が施行されます。
臨床病期分類は通常TNM分類(2010年)が使用されますが、Jackson分類が使用されることもあります。

TNM分類(2010年)

原発腫瘍(T)
 
TX
原発腫瘍の評価が不可能
 
T0
原発腫瘍を認めない
 
Tis
上皮内がん
 
Ta
非浸潤性疣贅がん
 
T1a
腫瘍がリンパ血管浸潤を伴わずに上皮下結合組織に浸潤し、低分化(すなわち、悪性度3-4)ではない
 
T1b
腫瘍がリンパ血管浸潤を伴って上皮下結合組織に浸潤し、低分化である
 
T2
腫瘍が尿道海綿体または陰茎海綿体に浸潤している
 
T3
腫瘍が尿道に浸潤している
 
T4
腫瘍がその他の隣接臓器に浸潤している
所属リンパ節(N)は郭清手術をした場合としなかった場合で分類が異なります
臨床病期の決定(郭清をしない場合)
 
NX
所属リンパ節の評価が不可能
 
N0
触知可能なまたは肉眼的に腫大した鼠径リンパ節を認めない
 
N1
触知可能な片側の移動性鼠径リンパ節
 
N2
触知可能な多発または両側の移動性鼠径リンパ節
 
N3
触知可能な片側または両側の固定化した鼠径リンパ節腫瘤または骨盤リンパ節腫大
病理病期の決定(郭清をした場合)
 
NX
所属リンパ節の評価が不可能
 
N0
所属リンパ節に転移を認めない
 
N1
1個の鼠径リンパ節転移
 
N2
多発または両側の鼠径リンパ節転移
 
N3
リンパ節転移の節外への進展または片側または両側の骨盤リンパ節転移
遠隔転移(M)
 
M0
遠隔転移を認めない
 
M1
遠隔転移を認める(小骨盤外へのリンパ節転移も含む)

Jackson分類

1期
腫瘍は、亀頭部、包皮、もしくは両者の表層に限局している
2期
腫瘍は、陰茎体部に浸潤している
3期
鼠径リンパ節転移を認めるが、手術可能である
4期
腫瘍は陰茎体部を越えて浸潤するか、手術不可能な鼠径リンパ節転移もしくは遠隔転移を認める