補完代替医療ってなに?

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健康食品

厚生労働省研究班が2005年に報告した我が国のがん患者における補完代替医療の利用実態調査によると、約45%の人が1種類以上利用していることが明らかとなりました(1)。
また、具体的に利用しているものについては、健康食品の利用頻度が圧倒的に高いということも分かりました(表1-1、1-2)。

表1-1.利用している補完代替医療の種類
健康食品・サプリメント(漢方、ビタミンを含む) 96.2%
気功 3.8%
3.7%
3.6%

表1-2.利用している健康食品・サプリメントの種類
キノコ類 アガリクス 60.6%
AHCC 7.4%
レイシ 6.3%
メシマコブ 4.4%
キノコ類
以外
プロポリス 28.8%
漢方薬 7.1%
キトサン 7.1%
サメ軟骨 6.7%
ウコン 5.9%
ビタミン 4.8%
クロレラ 3.7%

では、健康食品は、本当にがんを小さくしたり、再発を予防したりすることができるのでしょうか?
がんの専門家が集まって組織された国際統合がん学会(米国)が2007年に発表した「がんの統合医療ガイドライン」によると、健康食品に関連する項目は3つあります(2)。

ダイエタリー・サプリメントは、生薬製剤も大量療法のビタミン・ミネラルも含め、副作用および他の医薬品との相互作用の可能性について評価することが薦められる。
化学療法剤(抗がん剤)を含めた他の医薬品との相互作用がありうると考えられるものは、化学療法や放射線療法と平行して、あるいは手術の前には、用いるべきではない。


基礎的な健康を増進する日常の食事について指導を受けるため、患者を資格のある栄養士に紹介することが薦められる。


抗がん療法を望まない、あるいは奏功しなかったがん患者については、生薬製剤の使用は、臨床試験の中で、あるいは認められた栄養ガイドラインに沿って、あるいは入手可能な根拠に基いたリスク/ベネフィット比を臨床評価する中でのみ、実施すべきである。
例えば自然療法がん治療の専門医として認定された自然療法医のような、補完代替医療のしかるべき力のある専門家への紹介も考慮すべきかもしれない。

ご覧になってお分かりの通り、このガイドラインでは特定の健康食品は取り上げられていません。
つまり、治療期間中もしくは治療が終了し経過観察中のがん患者が、日常の一般的な食事について栄養士から指導を受ける場合を除いて、治療目的や再発予防目的に特定の健康食品を利用することは現段階では確固たる科学的な裏付けはないということになります。
しかし、それでも利用したい場合は、臨床試験に参加したりするなど医師や専門家の管理のもとで利用すべきとしています。
その一方で、ビタミンやミネラルも含めて健康食品で副作用(健康被害)や他の医薬品との相互作用が懸念される場合は利用を控えるべきであるとしています。

なお、ここでいう「確固たる科学的な裏付けはない」ということは、「健康食品は効果がない」という意味ではありません。
現段階では、「効果があるのかないのかわからない」という意味になります。
そこで、現在、世界各国で健康食品は本当に効果があるのかどうか検証する取り組みが始まっていて、その研究結果も近年報告されるようになってきました。
そのなかで、学術論文として発表されている研究結果を精査してまとめた書籍『「がんに効く」民間療法のホント・ウソー補完代替医療を検証する』(3)から内容の一部を表2に抜粋します。

表2.健康食品に関するヒト臨床試験の論文報告の状況(文献3より改変)
内容 アガリクス プロポリス AHCC チキン・
キトサン
サメ軟骨
がん患者の生活の質を改善するか? 報告あり 報告なし 報告あり
(肝細胞癌)
報告なし 報告なし
手術・抗癌剤・放射線治療の副作用を軽減するか? 報告あり
(婦人科癌)
報告なし 報告なし 報告なし 報告なし
再発を予防したり、生存期間を延長したりするか? 報告なし 報告なし 報告あり
(肝細胞癌)
報告なし 報告あり
(腎細胞癌)

表2をみて分かる通り、がん患者が利用している健康食品において、若干ではありますがヒト臨床試験で有効性が確認されたものがあり、健康食品が抗がん効果をもっている可能性も考えられます。
しかし、報告数はごくわずかであり、健康食品の抗がん効果について現段階ではあくまでも「可能性がある」という認識にとどめておくべきでしょう。
さらに健康食品の場合、例えば同じ「アガリクス」と名をうった製品であっても、メーカーによって製造方法や有効成分の含まれている量などが異なるという問題点もあります。
そのため、同じ素材の健康食品でも、それぞれの製品ごとに抗がん効果について違いがでてくる可能性もあります。
今後さらに臨床試験が行われ、個々の健康食品の有効・無効について明らかにされていくことが求められます。

また、健康食品による副作用(健康被害)などの報告については、独立行政法人国立健康・栄養研究所のホームページにある『「健康食品」の安全性・有効性情報』
http://hfnet.nih.go.jp/contents/indiv.html
に最新情報が掲載されているので、ぜひ参考にしてみて下さい。

さいごに、実際に健康食品を購入して利用しようと考えたとき、どのようなことに注意すべきかなどをチェックリスト形式でまとめた「がんの補完代替医療ガイドブック」
http://www.jcam-net.jp/topics/guidebook.html
も一読してみてください。

【参考文献】

  1. Hyodo I et al. Nationwide survey on complementary and alternative medicine in cancer patients in Japan. J Clin Oncol. 2005;23:2645-54.
  2. Deng GE, et al: Integrative Oncology Practice Guidelines. J Soc Integr Oncol 5: 65-84, 2007.
  3. 住吉義光、大野智. 「がんに効く」民間療法のホント・ウソ ―補完代替医療を検証する. 中央法規出版 2007年発行

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